Labyrinth(話)

□4限目:距離
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少し眉間に皺を寄せつつ高杉の顔を見つめながら、俺は先日の事を思い出していた。

(愛してる…)

あれは聞き間違いだったのだろうか?いや、万が一愛してると言っていたとしても良いが、問題はその前だ

(………き)

あまり意識して聞いていなかった為、上手く聞き取る事が出来なかった
最初は『銀時』と呼ばれたのかと思ったが、それだと次の言葉が繋がらない
でも…『き』って何だ?やっぱりポッキーか?そんなポッキー好きたァ聞いてなかったが…




「…なァ、高杉」
「…あァ?」
「お前ポッキー好き?」
「…別に嫌いじゃねェけど。」
「じゃあ、愛してる?」
「…馬鹿かお前。」



やっぱりポッキーじゃあねェよな…でもそれなら最後に『き』が付くのって何だ?
恋人…とか?沙希とか亜紀とか夏樹とか…まァ色々女なら名前あるしなァ
でも普段こんだけ俺等と居るわけだし、今は居ないはず…って事ァ元カノ?



「…なァ、高杉」
「今度は何だよ」
「お前元カノに、最後に『き』って文字付く奴いる?」
「…居たぜ?」



やっぱり彼女か…だよな、俺な訳ねェよな。



「へぇ…何て名前?」
「…銀時」



その言葉に思わず言葉を失った。
元カノが…俺?つーかお前と付き合ってた憶え無いんですけど、つーかそれ以前に俺ァ男だ。
でも『銀時』なんてそうそう居る名前じゃあねェ…って事はやっぱり俺?




「えっと………」


返事に困っていると、高杉はじっと俺を見つめた後に表情を緩めた。



「冗談に決まってるだろォが、バーカ。」
「ば、バーカってお前ェ…」
「憶えてねェよ、一々前の女の名前なんざ…つーか下らねェ事言ってないで問題教えろや。」
「あ…そーだったな。」



…また、あの感覚に襲われた。
まるで過去にあった事を繰り返している様な…テレビで見た事をが目の前で再現されている様な感覚
俺は前に全く同じ様なやり取りをしていて、それで場所とか状況とかも全く同じ様な…そんな感覚。
俺は前にも見た事がある、夕焼けの差し込む部屋で、こうやって高杉が俺に向かって微笑みかける…
でもこうやって高杉と教室に残るのは初めてだし、第一高杉とは逢ってまだ間もない
なのに何故、いつもこんな感覚になるのだろうか…














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