銀魂(話)

□その距離がもどかしい
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「……よォ」
「おっ、ナイスタイミ〜ング」



何時もの様に気まぐれに万事屋に足を運ぶと、パチンコで珍しく儲けが入ったらしく家の主はご機嫌だった
俺の姿を見るなり冷蔵庫を開けてくるので中を覗きこむと中は一面苺牛乳…金が在るうちに、とまとめ買いしたらしい。
(賞味期限が来る前に全て飲み干すつもりか?こいつは…)
そうは思ったが口には出さず代わりに盛大な溜め息をついた
銀時は鼻歌を歌いながらその中から一本の苺牛乳を取り出すと「今日は外で食おうぜ」と一言言って外を指差す
まァ金が入って浮かれたコイツは奢ってやる、と言いたいのだろう
特に断る理由もなく、俺は小さく頷くと玄関へと向かい万事屋を後にする



「さーて、何食うかなァ?」
「…どうせパフェとか言うんだろ」
「それはデザートだっつーの」
「結局食うのかよ…」



そんな有り触れた会話をしながら銀時は俺の少し先を、俺はそれに付いて行く様に歩く
普段万事屋の中でならうざい位にべたべたと…まァ色々とスキンシップが激しい訳だが
いざ外にでるとやはりそういう事は幾らあいつでもして来ない…まァして来られても困るが
只何となく、外で見つめる後姿が銀時とは別人のような気がして少し心がざわついた。
決してあいつが俺に触れてこないから寂しいとかそういうんじゃねェ
(…そうじゃねェ、俺は只きっと…)
気付けば俺は無意識に銀時へと手を伸ばし、その手で着物の裾を掴んでいた
そう、これはきっと寂しいとかじゃなくて…もう慣れてしまったお前の匂いが側に無い事が落ち着かないだけだ

でも振り返った時のお前の柔らかな表情が光で霞んで、より一層心が落ち着かなくなったのは何故だろう。






その距離がもどかしい
それはきっと、俺の知らないお前がそこにいた気がしたから












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