□雨が降るということは、独りになることを意味しているのかな?
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自分は雨男だ。
そんなこと、わかっている。
雑誌の連載もよく雨の日になる。

だけど、


「天気予報ハズレー!快晴じゃん」
「ほんと、いい天気」
「気持ちいいねー」


今、俺の隣で騒がしいのは黄泉。
昨日の夜中、突然俺の家に上がり込んできた、ある意味非常識なやつ。
理由は特になかったらしい。


「朝から気分いいよね」
「うん、すがすがしいよ」


何故か黄泉といる日は、晴れることが多い。
今だって梅雨シーズンど真ん中。
黄泉は晴れ男なのか?


「黄泉って晴れ男?」
「ん?俺?」
「黄泉といれば晴れが多いからさ」
「ほんと?自分では気づかなかった」
「俺が雨男だから、羨ましいな」
「咲人は晴れの日が好き?」
「うん、雨だと髪がモワッてなるから」
「そっか」


でも、雨の日も嫌いじゃない。
ゆっくりと読書できる雰囲気があるし…
って、最近は専らモンハンしてるけどね。
読書の雰囲気とか関係ないか。


「じゃ、咲人のためにずっと晴れにしてあげようか?」
「へっ?」
「だからさ」
「わ、ちょッ…!」


とすッ


「よ、黄泉?」
「ずっとずっと、咲人のそばにいるから」
「そ、んな真顔で…」


ソファに優しく押し倒された。
黄泉って意外と力がある。


「だって最近、咲人の機嫌悪いじゃん」
「えッ?」
「咲人にはいつでも笑っていてほしいから」


ああ、確かに最近の俺は機嫌が悪い。
でもそれは、雨だけじゃない。
でもそれに、確信は持てない。


「なんで機嫌悪かったの?」
「だ、だから雨だろっ」
「顔、赤いよ」


いつもの不可解な笑い方で俺のことを見てる黄泉。
ああ、見透かされてたんだ。
本人よりも早く、俺のこと。


「咲人、俺のこと大好きでしょ?」
「、…違ぅ…」
「語尾、しぼんでるよ」


黄泉のことは好き。
でもそれが、仲間意識<恋愛対象になっているかに確信が持てない。
いや、認めたくない自分がいるんだ。
ハイリスク、ハイリターン。
それを恐れているんだ。


「か、からかわないでよ」
「咲人、俺、本気で咲人が好き」
「っ、」
「咲人が怖いのはよくわかるよ、だって俺も怖いんだから」
「、ょみ、俺ッ」
「でも、咲人が嫌ならね、仕方ないよね」


くす、と寂しそうな顔をして笑った黄泉。

なんか、

黄泉のこんな顔、

見たくないよ。


「、れっ、…きだよ…」
「えッ?」
「、俺ッ、好きだょ」
「さ、きと」
「嫌なんかじゃない、意気地なしなだけ」


顔は真っ赤。
耳も真っ赤。
でも、心の奥では『大丈夫ナノカ?』と聞いてくる俺がいる。


「咲人、ありがとう」
「…ッ…」
「怖がらなくていいよ、大丈夫だから」
「…確信…ない…黄泉を好きっていう…」
「それでもいいよ、ちょっとずつでいいよ」
「、ありがと」
「咲人、だいすき」



そんな優しい声で囁かれたら、
誰だって堕ちてしまうに決まっている。

もしかしたらこれはただの気のせいなのかもしれない。

でも、

『気のせい』で片づけたくない俺がいる。

嗚呼、答えは簡単。

少し目をつむれば、見いだせる。

『仲間意識<恋愛対象』

嗚呼、確信が持てた。

さあ、つむった目を開けろ。

目の前にいる彼の唇に吸いつくんだ。



「、んっ」
「!?」
「ぷは、ごちそうさま」
「美味しかった?」
「それはそれは、ね」
「咲人、かーわいい」


へにゃり、と笑う黄泉の顔は、さっきまでの寂しそうな顔とは比べものにならな
いほど幸せそうだ。

最近の俺の不機嫌の理由。

(仕事でもプライベートでも)黄泉と2人っきりの時間が減ったから。

そんなこと言ったら、またアノ不可解な笑い方で笑われるんだろう。


「咲人、もっかいキスしよ?」
「ん」


明日も明日も、その明日も、
晴れでありますように。




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