□お約束な展開なのに、何故かときめく俺がいる
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お約束な展開なのに。
全然笑えないのに。
何故かときめく俺がいる。


「さきと!ソフトクリーム買ってき、っ…」
「!?」
「うわわっ」


ベショ


「…あー…やっちゃった…」
「あはは、また買ってくるよ!ごめんね」
「……」


買ってきたソフトをつまづいた拍子に落とす、お約束すぎて全然笑えない。

でも、

眩しいぐらいの笑顔で笑っている柩を見てると、ときめく俺がいる。


「はい、新しいソフトクリームです(笑)」
「ごめんね、2度も買わせて」
「なんで咲人が謝るの?落としたの俺だよ」


天気の良いとある公園。
顔面ピアスとガリガリが並んでソフトクリームを食べている図は思ったより、イ
ンパクト大らしい。
特に柩にいたっては、ちびっ子にビビられている。


「うお!?こええ!!」
「わー、痛そー」
「トゲトゲだぁ」
「ねぇ五月蠅いよ、餓鬼の分際で」
 ↑どSの顔
「(びくッ)な、なんだよー」
「柩の悪口言うな(●言●)」
「うわぁぁああん!!」
「ごめんなさぁい!!」


ふう、これだから子供は厄介なんだ。


「ちゃんと懲らしめたからね」
「咲人、やりすぎ(笑)」
「教育だよ、教育」


少し眉を下げて、困ったように笑う柩を見てると不思議に思う。

どうしてそんなに無邪気に笑えるの?

俺はもう、笑い方を忘れた。
創られた笑顔なら、職業柄、得意。


「ねぇ、柩」
「ん?」
「笑い方教えてよ、俺はもうわからなくなってきちゃった」


なに、言ってんの?と更に困ったように笑っていた柩も、あまりに俺が真剣だか
らか、すぐに真顔になった。


「咲人、笑えないの?」
「ホンモノは、ね。ツクリモノならいくらでも」
「…それって…咲人は楽しくないの?」
「楽しくない?」
「俺は咲人と一緒のときが凄く楽しいよ、だから笑っていられるの」
「……」
「自然と笑みがこぼれるんだ」


なんだ。
笑うって簡単。
ひつといれば、いつでも俺は楽しくて、

幸せだと感じるんだ。


「ひつ、ごめんね」
「?」
「俺、凄く楽しいよ」
「そう?よかった!」
「笑い方を忘れたなんて…馬鹿みたい」
「安心したよ、俺、咲人を喜ばせてあげられてないのかと思ったじゃん」
「ううん、凄く幸せ」
「そっか、よかった」


にぱあ、と笑った顔がいちばん好きな顔。
・・・・・。
あーあ、お約束だね。


「ひつ、鼻の頭にソフトついてるよ」
「えッ!?」
「はぁ、柩ってほんとお約束なネタばかりだね」
「ね、ネタじゃないよ!」
「ふふ、そんな柩が大好き」


まわりの人が見ていないと信じて、
(あえて確認はしなかったけど)
(だってスリルあるほうがいい)
柩の鼻の頭のソフトクリームをひと舐め。


「おいしい(笑)」
「ちょ、咲人…大胆な…」
「ふ、もう帰ろっか」


ベンチからゆっくり立ち上がった。
まだベンチに座って、ポーッとしている柩を見て、自然と笑みがこぼれた。


「くす、可愛いね、柩」
「な!?可愛いって言うな!」
「あはは、ごめんごめん」
「帰るよ!」


勢いよく立ち上がった柩は俺の前をスタスタ歩いてく。
ちょっと歩みが速いよ。


「ま、待って柩!速いよ!」
「……」
「速いってば!」
「……」
「もー…ぅわッ!?」


いきなり柩が立ち止まるもんだから、俺は柩に衝突。
うう、痛い。


「突然止まらないでよ」
「さきと」
「えッ?ひつ?」
「ここなら誰もいない」


くるりと反転した柩は俺と向かいあわせに。
俺の手と柩の手をぎゅっと繋ぐ。
指と指とを絡ませた、いわゆるラブ繋ぎで。


「ほ、ほんとに誰もこないかな?」
「さあね」
「そんなの、ッ」
「ま、見つかったら、見つかったでいいじゃんか」
「よ、よくない!」
「よくないの?見せつけようぜ」


にぃ、と口角を上げて笑う柩に。
俺の胸は弾む。

可愛いとカッコいいの二面性。
GAPに引かれちゃうんです。

ほらね、やっぱり俺も、

お約束なキャラなんです。




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