□Whyn't you drop any cigarette ashes on the carpet?
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「白以外は認めませんから」


前に雑誌の取材で俺は言った。
きっぱり、はっきりとね。
家具のはなしなんだけどね。
白以外は認めない(笑)


帰宅して自分の部屋の真ん前まで来たとき、扉の向こうから新弥の声が聞こえて
きた。
なんて言ってるかはわからないけど、酷く慌てているのはわかる。
ガチャリと扉を開き、どうしたの?と聞こうとしたら、


「よーし、アグロ、ストップだからな」
「新弥?」
「さ、さきと!?おかえりッ」
「なにしてんの?」
「や、なんでもない」


帰宅した俺を見るなり、
新弥が慌てふためいた顔で
玄関にいる俺まで走ってきた。
理由のわからない俺は、状況がわからずポカンとするばかり。


「あ、アグロをケージから出したね」
「あああ!行くな!」
「ここ俺の家だし、アグロ、おいで」
「だああああ!咲人、言わなきゃいけないことがあるんだ!」


後ろから新弥に手で目隠しされ、そのまま玄関のほうまで引き返された。
目隠しを外されて、目を開けると、
新弥が泣きそうな顔していたから、
びっくりして間抜けな声を出してしまった。


「へッ?」
「…咲人…」
「な、なんなんだよ?」
「咲人、マジごめん!ごめんな!」
「…えッ…な、なに…?…」
「、俺ッ…俺ッ…大変なことを…」
「順を追って話してよ」


新弥の頭を撫でながら、話を聞いてあげることにした。
新弥は泣きそうな顔のまま、ぽつりと一言呟く。


「…カーペットに…煙草落とした…」


普段ならまだ意味がわからないかもしれなかったけど、ついさっきまで取材を受
けていたので意味を理解するのは簡単だった。

白い部屋の
白いカーペットに
不似合いな黒い焦げ痕。

想像がつく。
そして新弥の行動もわかった。


「お前さ、まさかアグロで焦げ痕を隠そうとはしてなかったよね?」
「(ビクッ)」
「はあ、実物見せてよ」
「こ、こっち」


新弥はゆっくりとアグロを抱き上げた。
アグロの下にはポツンと黒い焦げ痕。
やっぱり実物を見るのは、想像よりもショックが強く感じた。
遠くからでも目立つよな、これ。
でも…


「マジごめん!新しいの買うから!」
「…いい…このままでいい…」
「え?」
「…にーやの…にーやのいる印みたい…」
「!」
「ちょっとだけ、気に入ったよ」


ふっ、と笑ってみせる。
新弥は申し訳なそうに俺の頭を撫でる。


「無理すんな、いいからかばわなくて」
「ううん、もういいんだ」
「…咲…ありがとう…」


その日のキスは、
いつもより少しだけ、
煙草くさいキスだった。

煙草は新弥のいる印、
そう思うと、
ちょっと幸せ。


終・反省会→
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