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□愛され人
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鉄と鉄がぶつかり合う音が響く戦場。

傍らではまばゆい青の光が辺り一体を包み、異界の者が召喚される。

凶暴なはぐれたちがいると評判の草原。そこでの激しい戦闘がやっと終わり、ポムニットは戦闘中の鋭い気配と眼光を消し去るように、肩の力を抜きながら息を吐いた。

「はぁ……やっと終わりましたねぇ、ミントさん」

ポムニットはそう呟きながら、背を任せていたミントに振り返る。すると視界には、金の髪をふわりと揺らしながら後ろへと倒れていくミントの姿。

「ミントさん!?」

ポムニットが慌ててミントの身体を支え、その顔を覗き込むと額には汗が滲み、肌は青白い。

「ごめんなさい、ポムニットさん。ちょっと、無理しちゃったみたいです」

いつもより儚く笑った彼女の全身をざっと見ても、特に外傷らしきものは見当たらない。

―怪我はふせげたようですけど……―

それも当然のこと。
互いに自分の身を守るより優先して、背を預ける者を庇っていたからだ。

―なら……?わたくしの能力は周りに放っていないし……―

ポムニットは真剣な表情で考えながら毒、憑依、……一番厄介な自分の能力など、様々な可能性を考え、結果、命に関わる事態ではないことを確認して心臓の高鳴りをおさえつける。

とりあえずミントの額の汗を白いレースのハンカチで拭うと、仲間たちも何事かと集まってきた。

「ミントお姉ちゃん!?どうしたのっ!怪我!?」

険しい顔でフェアは剣を鞘に納めながら、ポムニットの隣にしゃがみこむ。みんなの狼狽する姿にミントは小さくため息を溢した……
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