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□二人きりの時間
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「みーおちゃーん、クーラーつけてー」
「駄目」
床に座る私の背後…つまりはベッドの上で、夏の暑さにだらけている律がゴロゴロと寝転んで暴れ出す。それを横目で見ながら、私は宿題の手を止めた。
「毎日毎日クーラーつけたら身体に悪いだろ。それより宿題、わざわざしにきたんならやりなよ」
「暑くて無理だよ…」
「涼しくしてもやらないだろーが!」
ぺしりと軽く頭を叩くと律は唇を尖らせた。
「今日は部活休みだし…暇だぜー…」
暇、暇、暇と連呼する律。
確かに私も軽音部が休みなのはつまらない。
だけど仮にも…
「楽しいことないかなあ」
恋人、…と一緒にいる時に連呼しなくてもいいじゃん…。
「ごめん、楽しいことやってあげられないつまんない人間で」
馬鹿みたいことで思わず冷たく、投げやりに言い放ってしまった私に、律は「お?」と短く声をあげた。
同時にベッドがきしむ音。
「いや、別に澪と二人の時間に文句がある訳じゃなくてさ」
「でもそう言ってるだろ……きゃっ!」
急に後ろから抱き締められて私は悲鳴をあげた。
振り返ろうとすると律の可愛い横顔のアップに、さらさらした色素の薄い髪の毛。
「軽音部の時間はワイワイガヤガヤ楽しい、澪との時間は胸キュンいっぱい幸せ。充実と暇の感覚とか違う、って…意味わかったか?」
「…ごめん、ぜんっぜん意味わかんない」
私の言葉に律はがくりと項垂れる。
いやだってあまりにも感覚的すぎるんだもん…