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□初恋の思い出
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「こんにちはー」
スカートを優雅にはためかせ私を見下ろしたのは、学園に所属する人間なら誰でも知ってる有名人の1人だった。
「へ、あっ、あー…」
―極上生徒会の桂先輩!!―
驚きで口をパクパクしていると桂先輩はクスリと微笑んで小首を傾げた。
「隣、良いですか?」
緊張のあまりに返事を返せなくて頷いて意思表示を見せると桂先輩は気を悪くした風もなく私の隣に腰掛けた。
「私も便乗しまーす」
なんて言って、なんと桂先輩は私と同じように草原の上に仰向けに寝転んだ。
「あっ!!」
「どうしたの?」
「い、いいえ…」
その時自分がまだ寝転んだままだったことに気付き、かといって起き上がるタイミングを逃した私は恥ずかしさに顔の熱さを感じながら目を閉じる。
そんな私を気にかけず、桂先輩は空に向かってゆっくりと腕を伸ばした。
「良い空、お日さまも気持ち良いですねぇ…」
「そ、そう、ですね」
とりあえず返事を返して隣を盗み見ると1つ上とは思えない位に綺麗で整った顔に私の心臓は早鐘を打つ。
「…きれい…」
「空が?」
「あっ、はっはい。空、が」
思わず溢れた言葉の恥ずかしさに片手で口元を隠しながらそう嘘をつくと桂先輩は穏やかな笑い声を漏らした。
―やっぱり、桂先輩は綺麗な人…―
今まであんまり人が好きになれなかった私が、初めて、遠目だけで心を動かされた人。
それが女性だったことは驚いたし、いまいち納得が出来てなかったところはあったけど、今こうして隣にいるだけで既に『好きになれて良かった』と思える雰囲気を桂先輩は感じさせた。