H×B
□見守ってるから
1ページ/4ページ
「っ…あとっ…100本…!」
今日も蒼は放課後、一心不乱に剣に励む。
ただひたすらに人気のない場所で一人、風を、葉を。
―あれ、どの位時間たったんだろ?―
ふとそう思う時はあったが腕時計を身につけていなかった彼女は時刻を調べる術はなく、故にやめるきっかけもなく。
まっすぐな瞳で額に汗を滲ませながら基本の型を繰り返し繰り返し行っていた。
始まりは刃友のみずちから、
『無道さんたちにまた挑戦するには実力が足りないわ。練習しましょう、蒼』
真剣な瞳でそう言われてから元々家族を守る意味しかなかった素振りが一心に強さを求める素振りに変化した。
彼女の瞳に映るは剥き出しの闘争心でもなく飽きでもなく、努力という名の希望。
―そろそろみずちさんに認めてもらえる腕前位にはなれてるかな―
そういえば、最近鐘が鳴ってない。梅雨時だからかと蒼は自己解釈してすぐに考えをやめ、延々と素振りしていると草を踏む足音がした。
「そろそろ雨が降るそうよ」
「え?」
突然かけられた声に蒼はぴくりと反応し腕を止める。
普通なら声なんて耳に届かないのだが。
その落ち着いたトーンだけは蒼を我に帰らせた。