H×B

□刃友で先輩で、恋人
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桜もすっかり青々とした葉に変わった5月の1日の放課後、私は槙先輩と並んで住宅街を歩いていた。

「本当にゴメンね」

「どうして先輩が謝るんですか」

「いやだって、私の誕生日なんかをゆかりのお家に負担をかけてもらって」

「そう言われても私の母がお祝いしたいって言っただけで…むしろ私が迷惑をかけた気分なんですから」

溜め息を吐く。
私からの誕生日プレゼントであるシルバーネックレスを首元にさりげなく輝かせる隣の先輩に…ではなく私の母に。


《ゆかり、今度のGWも帰らないの?最近貴方ずっと帰ってないじゃない》

なんて、昨日突然かかってきた母からの久しぶりの電話。

実家には鐘の鳴り具合を考慮しつつ前はそれなり帰省をしていた。でも思えば最近はすっかり顔を見せてないことが母は不満らしい。

父は警察で留守がち、一人娘は寮。母の寂しさを理解している。

実家に帰省する人も多く、鐘が鳴らない可能性が高い連休位久しぶりに帰るのも悪くないかなと思い、私は壁にかかっていたカレンダーを眺め、あ、と眉を寄せた。

『…ごめん、お母さん。今度の週末からすぐには無理。GWの…半ば位でも良い?』


《駄目じゃないけど…週末はデート?》

『なっなんでっ!』

ある意味的に当たったような母の一言に思わず裏返った声は相手にいらぬ想像を生まれさせたらしい。

《女子学園でしかも寮に入ったから浮いた話はないと諦めてたけど、ゆかりがねぇ〜》

ふふふ、と笑う母の勘違いに私は慌てて否定した。

『もう、違う!その前日の1日が刃友の先輩の誕生日なのよっ』

電話の向こうに叫ぶと母は納得した声をあげて言った。

《ああ、その刃友さんってゆかりがすごくお世話になっている人よね。ねぇ、ご迷惑じゃなければこっちでお祝いしなさいな。一度お会いしてお礼言いたかったし》

『は…?』
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