H×B

□もう大丈夫
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母がフェンシング界で世界的に有名だということは幼い頃から理解していた。

そしてその一人娘にも周りはそれなりに期待をしていることも。

はじめは子どもの遊びで母からフェンシングを学び、たまたま出場した小学生の大会で一応の成績を残してしまったのが期待に歯車をかけた。

でも母の教え方は「楽しく」だったから、勝利へのプレッシャーも無く、自由にフェンシングが出来て『助かった』。

『助かった』、と思う位なら剣を握らなければ良いのはわかる。

でも私にとって母から受け継いだフェンシングは幼いころからの私の一部となっていた。一部を日常から無くすと多分バランスが保てないことも幼な心に感じていた。

でも、学年が上がるにつれて期待が強くまり、自由に試合が出来なくなりつつあった私に天地学園の剣待生制度の話が耳に届いた。

―あそこなら自由に大好きな剣が握れる。自分の高みをはかれる―




そして無事に剣待生として入学を果たし、なんにでも興味のアンテナを向けた私は絵を描くことに心を囚われた。


自由なものに、心の中を、描くことが出来る様々な色の世界。

それぞれに魅力のある剣と、絵はそれぞれ均等に心を満たす。

けれども対称的な世界が故に両立させることは難しく、最初の刃友は絵を選んで転校。
私はといえばどちらかを捨てる決断を選べずにいる優柔不断な人間。

そして、今に至ってはゆかりが無道さんと見ていた空を、私も刃友として見てみたくて。
剣か絵か、昔以上にどちらも選べなくなった。
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