Persona
□恋の花
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オレンジ色の夕陽がさす放課後の教室。
教室の後ろで一人ぼんやりと掲示板を眺めていた陽介は、上着の裾を後ろから、ちょんちょんと引かれる感覚に背後を振り返った。
視線を少し下に下げると、腰に手をあてる千枝の姿。
「…里中、お前後ろから引っ張るなんて天城みたいな女っぽいことしてどうした?熱でもあるのか…ぁぁ!」
千枝の放った得意の回し蹴りを陽介はすれすれの辺りで避ける。
「あ、あぶねぇー」
心臓の鼓動を早めながら千枝をにらむと彼女は妙に緊張した風な表情が浮かんでいた。
「至急屋上に来ること!」
「へ?」
呆然とする陽介を置き去りに、千枝は脱兎の如く教室を飛び出すと廊下に消えてしまった。
「なんだありゃ…なんか事件の進展でもあったっけ…?」
ヒントを得ようかと彼女の親友の姿を探すも、頼りの姫はもう旅館の手伝いをすべく一足早く帰ってしまったようで。
陽介は首を傾げながらゆっくりと階段を一段一段踏んでいった。