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□一ヶ月記念日
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まゆらさんと付き合いはじめて早一ヶ月がたった。
毎日が誰もが羨む程にベタベタ、ベタベタ。
「はぁ」
なんてことになっていたら、こんな風に春休み一人で副会長室の机に頬杖をついていないだろう。
「まゆらさん…」
なんとなく小さく名前を呟く。
呟けばそこにまゆらさんがいる気がして。
―けれども今彼女があらわれても私はどうしたら良いのかしら…―
ただ話をする以外に恋人らしい事をしても良い間柄なのだろう。
けれども恋愛に関してはいまいち自分の脳が、手がスマートに動かなかった。故にキスをするだなんてとてもとても。
手を繋ぐので精一杯、なんて言ったらきっと聖奈さんは微笑ましく笑うだろう。
―でも関係が進展しそうな休日は学期末で忙しくてデートが無理でしたし…寮なんて尚更くっつけませんし―
自分らしくないもたもたした思考に苛々しながら寮から逃げてきたものの、一ヶ月の記念に何かしたらいいものかもわからなかった。
ため息を吐いたところでなんとなく空腹感を感じて腕時計を見る。
針は丁度12時をさしていた。
「頭を切り替えてお昼を買いに行きますか」
椅子からゆっくりと立ち上がったタイミングで副会長室の厚い木製の扉が控えめに二度ノックされた。