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□君さえいれば
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神宮司家主催パーティー。
いつも会場に著名な有名人、政治家たちが顔を揃える。
特に今日、7月8日は神宮司家現当主の誕生日ということで集まる数も多く、顔見せには好機会と読んだのか、普段顔すら見せないV機関の方々も重い腰を持ち上げて来ている様子。
「祝われる本人が呼んだ訳じゃないのに、ね」
私は口の中で小さく呟き苦笑いをすると辺りを見渡して幼なじみを探した。
「あらあら?」
自宅に一言電話で連絡をいれておこうと会場出た、ほんの何分かで主役はいなくなってしまったらしい。
キョロキョロと視線を右に左に動かしても、あのまぶしい位に美しい奏理事長が身にまとうワインレッドのドレスは見当たらない。
同じく同行していた奈々穂さんは見つけたけれども、金城家の親戚につかまっているようで近くに理事長の姿はない。
「庭は…小雨だからいるはずがないし…」
困ったな、と頬に手を当て、青く柔らかな照明で美しく配置されたプールのある庭を見る。
すると、探していた背中がそこにいた。
「り、理事長っ?!」
私は慌てて庭に飛び出すと、小雨の中、プールの淵に立って微動だにしない理事長に近寄った。