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□○○よりも大切なヒト
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「奈々穂さん、遅い…」

夜も9時をまわった頃。

ホールにて、まゆらはうろうろと歩きまわっていた。

通りがかった久遠には「何かあっても頑丈だから大丈夫ですわよ」とは言われているものの、部屋でくつろぐ気分にはなれず時計を見てため息を吐いた。

―夏休みにはいって、はじめてのデートだったのに―

二人で商店街を歩いていると、宮神の生徒が隣街の学生にしつこく話しかけられ迷惑している、という話が耳に入り奈々穂は駆け出した。

「まゆらは先に寮へ戻っていてくれ!」

そんな言葉を残して。

あとを追いかけようとしたが奈々穂の俊足とまゆらの鈍足とでは到底ついていけず。

泣く泣く先に寮に戻り、とりあえず奏に一言伝えたが、既に連絡があったのか「奈々穂なら大丈夫」の一点張りで待つしかなかった。

徐々に不安になってきたそんな時、寮の玄関が開いた。

「ただいま」

「奈々穂さん!」

おかえりなさい、と走りよったまゆらは血の滲む傷を見て表情を曇らせた。
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