サクラ大戦

□劇中劇
1ページ/7ページ


花火と2人でお茶をしている最中のこと。

「花火」

ふと、思い出した話題があり(そもそも、花火は自ら語るタイプではなく、いつも私から喋り始めるのだが)、私は目の前に座る親友に声をかけた。

しかし、暫く待っても返事が返ってこなく、私はもう一度彼女の名を呼んだ。

「花火?」

「はっはい!」

ぴくりと肩を震わせ、目をまばたきさせた、彼女らしくない反応に私は苦笑いを浮かべた。

「紅茶がすすんでいないぞ。もしや日本茶が良かったか?」

「いいえ、ごめんなさい」

花火はティーカップを手にとると、口に運び、一口飲んだ。

「美味しい」

そう言って微笑む花火の顔は青白く、力がない。

―そういえばここ連日、歩く足元が危うかったな…―

私は眉をひそめ、花火の表情を伺った。

「寝不足か?」

「…ええ、少し…」

視線を落とす彼女の顔には、1年前に見た影がうつり、私は思わず口をつぐむ。

―…気にしない方がいい、と誰が言える…あんな別れを経験した彼女に…―

「すまない」

ただ一言、そう謝ると花火はきょとんとした顔をして、いつもの穏やかな表情に戻った。

「もう…なぜグリシーヌが謝るの?ふふ」

「いっいや…!なんとなくな!」

挙動不審な私に、花火は優しげな笑みを見せた。

「6月の…空…雨の季節ね…」

青い空を仰ぎ見た花火の笑顔は、空とは対照的にぼんやりと曇っているような気がした…
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ