サクラ大戦
□劇中劇
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花火と2人でお茶をしている最中のこと。
「花火」
ふと、思い出した話題があり(そもそも、花火は自ら語るタイプではなく、いつも私から喋り始めるのだが)、私は目の前に座る親友に声をかけた。
しかし、暫く待っても返事が返ってこなく、私はもう一度彼女の名を呼んだ。
「花火?」
「はっはい!」
ぴくりと肩を震わせ、目をまばたきさせた、彼女らしくない反応に私は苦笑いを浮かべた。
「紅茶がすすんでいないぞ。もしや日本茶が良かったか?」
「いいえ、ごめんなさい」
花火はティーカップを手にとると、口に運び、一口飲んだ。
「美味しい」
そう言って微笑む花火の顔は青白く、力がない。
―そういえばここ連日、歩く足元が危うかったな…―
私は眉をひそめ、花火の表情を伺った。
「寝不足か?」
「…ええ、少し…」
視線を落とす彼女の顔には、1年前に見た影がうつり、私は思わず口をつぐむ。
―…気にしない方がいい、と誰が言える…あんな別れを経験した彼女に…―
「すまない」
ただ一言、そう謝ると花火はきょとんとした顔をして、いつもの穏やかな表情に戻った。
「もう…なぜグリシーヌが謝るの?ふふ」
「いっいや…!なんとなくな!」
挙動不審な私に、花火は優しげな笑みを見せた。
「6月の…空…雨の季節ね…」
青い空を仰ぎ見た花火の笑顔は、空とは対照的にぼんやりと曇っているような気がした…