カタン、カタン。
夜の景色が流れていく。
隣には銀時。
今日は久々のデートをした。
今はその帰りで電車に乗っている。
俺は指名手配中のテロリストなので銀時が貸してくれた着物とフード付きのパーカーを着ている。
銀時の手が俺の手を優しく包みこむ。
カタン、カタン。
心地良い揺れが眠りを誘う。
眠たく…なってきた…。
――――…
カタン。
「…ん…。」
目を覚まして隣を見ると、銀時も寝ていた。
可愛いな、と思いながら頬を撫でる。
ぬるり。
嫌な、感触がした。
手にはべっとり血がついていたのだ。
「ぎ…銀時、銀時ッッ!」
揺すると、銀時は顔を上げた。
「…ッッ!」
銀時は血濡れになって目を閉じていた。
「ぎ、ぎん…銀時ぃッッ!」
必死に揺すってみるが反応がない。
俺は指名手配中とゆうことも忘れて叫んだ。
「誰か、誰か助けて!銀時がッッ!銀時が…。誰か助けてッッ!!」
しかし、他の乗客は平然としている。
とゆうよりは気づいていない。
新聞を読んだり、寝たり、化粧したり…。
「誰か助けてくれよッッ!なあ、助けてくれッッ!」
相変わらず無反応の乗客。
まるで、俺の声が届いていないような感覚に陥った。
俺は携帯を取り出した。
だが、画面には「圏外」の二文字。
「くそッッ!」
すると、いきなり電話がかかってきた。
(圏外から抜けたのか!?)
「はい!」
俺は電話をとって、誰でもいいから助けを呼ぼうとした。
しかし、聞こえてきたのは信じ難い人の声だった。
『高杉。』
「ぎん…ッッ!?」
銀時の声だった。
隣を見ると、そこに銀時は居なかった。
代わりに、血の海に骨が浮いていた。
ひゅう、ひゅうと、渇いた呼吸。
嫌な汗が流れる。
俺は悲鳴をあげた。
「いやぁああああッッ!!」
『高杉、』
携帯から銀時の俺を呼ぶ声が聞こえる。
『高杉、』
『高杉!』
『高杉ッッ!』
「高杉。」
ハッ。
目を開けると、銀時が心配そうに覗き込んでいた。
「大丈夫か?うなされてたぞ、お前。」
「ぎ…銀時…。」
目の前の銀時はいつもの銀時で。
ドクッ。
ドクッ。
胸のあたりをギュッと鷲掴みにして、荒々しく息をした。
そんな俺を見て、銀時は優しく抱き締めてくれた。
「どうしたの…?」
着物からは銀時の匂い。
俺は言い切れない不安に涙が溢れた。
「ぎ、銀時が、銀時がッッ」
「俺が、どうしたの?」
「銀時が、血まみれでッッ…俺の前から…居なくなる夢を…見た…。」
すがりつく俺の額に唇を落として銀時は言った。
「夢だよ。それは、夢だ。」
「うん、うん。」
だが、銀時に抱かれていても不安は消えることはなかった。
「夢…だよ…。」
冷たく伏せられる銀時のまつげ。
本当に夢?
いつか…こんな日が来るんじゃないの…?
だから、そうやって目を伏せたんじゃないの?
口にするのが怖くて銀時にただ身を寄せた。
――――…
「本当に、泊まってかないの?」
「うん。」
「そっか。」
改札口の所で銀時と別れを告げる。
しかし歩き出そうとすると、不意に抱き寄せられた。
「銀…時…?」
銀時は力いっぱい俺を抱き締めた。
「高杉…。ずっと、ずっと側にいるから…。」
「うん…。」
そっと離れると、今度こそさよならをした。
「じゃあまたな、銀時。」
「ああ、またな。」
銀時は優しく笑って手を振った。
また、な。
それ以来、銀時に会うことは二度となかった。
END.