Nin

□過去拍手2
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狩りしましょう!どこで?



彼女は驚いたように目を開き、学生鞄からPSPをだした。鮮やかな黄色が少し目に痛い。モンハンですよ、やりましょう?え。CMで最近宣伝しているモンスターハンター。肉を焼いたり、踊ったり忙しいゲームだった気がする。やったことがないからよく分からないけれど。ごめん、持っていない。あんなに流行っているのに!?流行にのれないことは罪だろうか、いや罪ではないだろう。彼女の学校ではほぼ全員モンハンを持っているらしい。タカ丸君と伊作君がよく協力してくれると笑顔で言われる。あの不運!とペットボトルを潰しそうになった。しかしここは平和な食堂、暴走は良くない。買いましょう、二千円代に値下がりして安いんですよ!残念だけど、PSP本体を持っていないんだ。ええっ、利吉さんはDS派だったんですか!?そんな派閥があるんだ。DS派と言われてもピンとこない。ゲーム自体あまりやらないし、持っているソフトは漢検と英検だ(それだって全然使っていない。デジタルよりもアナログな紙に書いて勉強したほうが身に付くことに気付いた)。そうなんですか……じゃあ仕方ないですね。そうなんだよ。悲しそう
な顔はこちらも辛いが安易に買えるものではない。別の話に逸らせようと考えていると独り言が聞こえた。……伊作くんに手伝ってもらおう……。PSP、モンスターハンター、メモリーカードで大体二万円。彼女の心>二万円。よし買いに行こう。え?ちょうどお年玉をもらっていたところだし。本当ですか!?花のように笑う彼女を奪われるわけにはいかない。明日、一緒にやってくれる?勿論です!

次の日昼食をとった後、お互いのPSPを取り出した。黒にしたんですか。他の色より安かったし、派手な色はちょっとね。利吉さんは黒が似合いますね。黒にしてよかった!という笑みを堪える。昨日は買ってすぐにゲームを起動させた。武器は攻撃力が高い太刀。遠距離のボウガンも魅力的だったが、アイテムの多さと防御力の低さに抵抗があった。一人で黙々とクエストをクリアしていったことを思い出す。初心者だからといって彼女に無様なところは見せられない。クエストは何にしますか?じゃあ、緊急クエストのフルフルにしよう。実はまだ見たことがないけれど、嘴の大きい鳥も倒せたから大丈夫だろう。彼女はすぐに標的を見つけだし、位置を知らせてくれた。場所に向かい、画面に敵が映る。フルフルは全身雪のように白く、首は長く、口はあるが目鼻無しという何となく化け物と言いたくなるモンスターだった。しかも放電攻撃をし、当たると大ダメージを受ける。これは負けるかもしれない……と思ったとき、彼女は敵に向かって行った。利吉さん、私が守ります。彼女の片手剣は硬い敵の体にダメージを与え、あっという間に倒してしまった。勝利の曲が流れる。こ、小松田さんは強いんだね。強い武具を装備してるからですよ、これからも守りますからね!



格好いいところを見せたかったのに、ゲームの中であっても都合よくはいかない。けれど、『これからも』と言われたのだから、このゲームの流行に乗っている間は不運委員長に取られる心配はないだろうと安心した。
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