Nin

□過去拍手
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恋に障害は付き物らしい。


新聞社にもらったという映画チケットは今流行りの恋愛もの。母上は父上と見に行きたかったらしいが彼はなかなか時間が空かない。私が一人で行っても仕方ないわ、あなたにあげる。あげると言われても私は見ませんよ。誰かお友達を誘ったらどうでしょう。友達ですか。はいどうぞ、感想聞かせてね。チケットには綺麗な綺麗な紫陽花の写真。こんなのを見たがる男子学生が何処にいる。頷かずに今日の焼き魚は美味しいですねと誤魔化した。
さてさて恋愛ものを好むのは一般的に考えて男より女だろう。小松田さんも喜ぶはず。母上に頼まれたからであってデートではない、よって躊躇う理由もない。そういえば彼女の私服を見たことがない。制服姿も可愛いけれども私服姿だって気になる。これを機会に見ることができるじゃないか。隣の高校まで父上が忘れた弁当を届け、小松田さんが来るまで父上と言い争い。彼女が来たらそのまま一緒に昼食。彼女はラーメン、私は蕎麦を注文した。向かいに座っていただきますと手を合わせる。タイムリミットは昼食が終わるまで。さあ言え利吉。デートじゃないのだから緊張しないはずだろう。ねえ小松田さん、恋愛映画は好き?はい好きですよ。実は映画のチケットが余っているんだ、もし見たいのならあげるよ。うわぁ、ありがとうございます!彼女にチケットを渡す。これで彼女の私服が見れる!心の中でガッツポーズ。私と一緒に見ないかと言おうとしたとき、彼女がチケットを返してきた。あの、この映画見たことあるんです。これはまだ公開してから一週間も経っていないよ。お兄ちゃんと試写会で…………。どこまで彼は邪魔をするんだ!




結局私と母上で映画を見た。ヒロインの兄の邪魔を受ける主人公に深く同情する。
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