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□深夜の遊園地、感じる、指輪
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営業時間には電気の無駄遣いなぐらいギラギラ光っていた遊園地も深夜になると道が照らせるくらいまで照明を落としていた。バイト仲間に別れを告げてメリーゴーランドの周辺を俯きながら廻る。

「捜し物は見つかった?」

いいえまだですー。

事務と札を貼られた忍者服を纏っているポニーテールの少年が首を振る。彼が傍を通っても誰も気にしない。時代劇のような格好でも気付かない。本人も気にしていない。だから私も何も言わない。


「一体何を落としたの?昼間探しておくから」

そ、それは内緒です!

彼はちょっと怯えながら目を逸らす。ははあ、私に怒られてしまうものを落としたのか。そうかそうか、なら期待通りに怒ってやろう。怒鳴ると私が精神異常に見られるから絶対零度の笑みで。

「小松田くん?」

うっ、うわあああん!ごめんなさいー!!

メリーゴーランドの屋根まで勢いよく逃げていく。落とし物はそんなところにあるのか?風に飛ばされやすいハンカチだろうか。今日は強風なしの絶好の花火日和だったけれども。



ジェットコースターもコーヒーカップ(お化け屋敷は怖いからという理由で避けられた)も探したが、彼の落とし物は見つからなかった。サービスセンターに届けられていると思ったが、彼曰くなかったらしい。

「そろそろ帰ろう。もう満足しただろう?」

ええっもうですか!?まだ探したいです!

「キリがないだろ。何落としたんだ」

……指輪です。利吉さんからいただいた指輪です。

私が与えた指輪?そういえばチープなシルバーのリングを渡したことを思い出す。人外の吸血鬼に銀が効くなら安物でも成仏するかなとお試し感覚、実験する気持ちで付けさせたのだ。それを大事にしていたなんて。

「……馬鹿だね君は」

よく言われます。

淋しそうな顔。彼の左手を掴み、薬指を力強く噛んだ。氷を口に含んだような、いやそれ以上の冷たさに寒気を感じる。

いたい、いたいです!

口を離すと綺麗な歯形が付いた。ちょっと赤く涙目の彼に胸が高鳴る。もっと苛めたい。危険な気持ちだった。思いを落ち着かせる。

「その指輪ならなくさないでしょ」

利吉さん……?

「消えかかったらまた付けるから」



深夜の遊園地、感じる、指輪




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