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□早朝のグラウンド、探す、目眩
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早朝のグラウンドだからといっても暑いのには変わりない。子供たちは元気で羨ましい。タンクトップに半ズボン、日焼けなんて気にしない。い組なんかに負けないぞぉ!と意気込みは買うが、巻き込まれる身にもなってくれ。
球技大会でバレーボールをやることになったんだ安藤先生がまた馬鹿にしてきて悔しいあの肌を冷や汗でテカらせてやりたいしかしわたしは出張があるし土井先生も忙しいだから利吉お前あの子たちの監督を頼むよろしくな。
恨みます父上。わいわいバレーボールを練習している彼らには私の気持ちなんて分からないだろうなあ。コートのネット脇で審判をしてるだけ。たまに暴れ玉が来るから座ってもいられない。暑い、暑い。団扇持ってくればよかった。

みんな元気ですねえ。

いた。暑さとは程遠いやつ。血の気のない肌は寒気がするほど涼しそうだ。冷たい手が頬に触れる。

気持ちいいですか?

にっこり微笑みを向けられる。確かに涼しい。暑さも引くはず。けれども胸はばくばくと音を立てていた。これは心臓発作か?彼が近くにいると寿命が減っていく気がする。

「利吉さんあぶなーい!」
「うわっ」

出た、場外必殺サーブ。急いで構えてボールを上に上げる。そして背の高い茂みがキャッチ。

「ごめんなさーい!」
「取りに行ってくる。練習続けて」

相手は子供、怒らない怒らない。わざとじゃないのだから怒らない怒らない。

眉間に皺が寄ってますよ。

「ちょっと黙ってくれないか」

茂みの中を掻き分けボールを探す。彼も協力してくれているのか上から探していた。茂みに隠れているから意味がないんだけどね。馬鹿すぎて目眩がしそうだ。

利吉さん危ない!

氷の手に突き飛ばされる。彼を通り抜けて先程までいた場所に硬いバレーボールが落下していた。ごめんなさーいと遠くから謝罪の声。わざとか、わざとなのか。

「ボールを弾き飛ばせばよかったじゃないか」

僕は利吉さん以外触れないんですー。ほら、

ボールを拾おうとして通り抜ける。何度も手が交差していた。出来ないでしょうと眉尻を下げて言われた。

霊感のあるボールなら触れると思います!人玉とか!

「人魂だろ。ボールじゃないし」


早朝のグラウンド、探す、目眩



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