Title

□深夜の床の上、騙される、汗
1ページ/1ページ




利吉さん今夜は一緒に寝ませんかと上目遣いで言われたのでこれは期待していいのかなと高鳴る胸。心の優しい鈍感な彼から誘うなんて滅多にない。ダメ元だったが短冊に書いたのがよかったのか。ん?しかしこの展開だと逆に泣かせてしまうのだが。



「さあ、天の川見ましょう!」
「そうだよね、その展開だよね」

騙された。深夜の床の上で天体観測、なんて健全な展開。勝手に期待した私が馬鹿だった。相手も16歳だし、大人なあれこれの知識を身に付けてると思ったのに。兄のゆとり教育の所為か?きちんと殺虫剤を蒔いて肥料を与えた結果か?淀みのない純粋な瞳は星のように煌めいている。

「今年は晴れてよかったです。彦星と織姫はもう会えたかなあ」

布を敷き、二人で仰向けになって夜空を見る。ちょうど手が重なったので思わず握ってしまった。彦星も手を離さなければ織姫と別れなかったろう。それとも自身と天帝に引っ張られる痛みに嘆く織姫を哀れんだのか。そうだとしても私だったら譲れない。嫌われたくない欲はあれど、優しい人という称号に興味はないからだ。
暑さに反応して汗が流れる。蒸し暑い夜だ。彼の頬にも雫が流れている。拭ってやりたい(もっと触りたい)が手を離すのが惜しかった。
彼が星を眺めながら口を開く。

「二人の願いが叶ったから僕の願いも叶いました」
「へえ、何を祈ったの?また忍者になること?」
「忍者には実力で就職するから大丈夫です!願いは今、叶っています」

えへへ、と笑う姿が可愛い。願い事は私だろうか。心優しい彼の願いはただ単に『綺麗な天の川が見れますように』かもしれない。いや、高確率でそうだ。それでも心は期待してしまう。体は正直だ。

「利吉さんの願い事はなんですか?」
「……私の願い事は今叶ってるよ」

『君の笑顔を見ていたい』なんて言えない。


深夜の床の上、騙される、汗




――――
目標、甘い利こま

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ