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□08.見つめる
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08.見つめる(しぶ乱)



ドクタケの赤い色眼鏡が森の中に落ちていた。
しかも道の真ん中、いかにも怪しい。
罠だよねえ。そこは落とし穴です、の印かもしれないし。
ここは回り道をするべきか?いやいや迷子になるかもだし。
あんまりドジをするものだからうっかり落としちゃったのかも。

心の優しいわたしは赤い色眼鏡を拾った。

……何も起こらない。

なんだやっぱり落とし物かあ。
手にした色眼鏡を自分のと交換する。
ぼやけている赤い風景。昼間なのに夕方みたいだった。

「引っ掛かったな!」

目の前に何かが現れる。声からして恐らくしぶ鬼だ。

「引っ掛かったって何が?」
「落とし穴だ!……あれ?」

おかしいなーここら辺に作ったのに、と彼がわたしに近寄る。
そして二人で落ちた。

「いたたた、何するの!」
「いったー、まさか体重が足りなかったなんて……」

彼はわたしにのしかかっていた。
顔にある左右の手を退かして欲しい。 じゃないと起き上がれない。

赤い彼は止まっていた。
視界はぼやけているし、全身赤く見えるしで表情が読めない。

「……っ見るな!」

凄い勢いで離れた。
見るなって言われても目を逸らす理由なんてない。そもそも目が悪いから見れないんだけどね。



眼鏡は無事だった。
付け替えると今度は後ろを向かれた。
何がしたいんだ彼は。






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