BASARA

□赤いリボンのついた麦わら帽子
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「……っ」
「さすけ、どうかしたか?けがしたのか?」
「大丈夫だよ」
言葉とは裏腹に立ち上がろうとする左助の表情はつらい顔をしていた。
信玄は屈んで左助の目線に合わせる。
「どうやら足をひねったようじゃな」
左助は信玄の後ろの木を眺めていた。


「あの、歩けますから下ろして下さい」
「なあに、軽い軽い」
左助は信玄に背負われていた。幸村も後ろからついてきている。
なんて自分は情けないのだろう。子供の重さに耐えきれなかったなんて。筋トレをしとけばよかった。
お館様だったらきっと受け止めていただろう。自分はまだまだ子供。大人にはかなわない。
目が潤んできた。痛いからではない。悔しいからだ。
早く大人になりたい。どこまでが子供でどこからが大人かは知らないけれど。
「迷惑をおかけしてすみません……」
「迷惑などしてないぞ。礼を言いたいくらいだ。
わしでは間に合わなかった。左助、よくやった」
信玄の背は自分よりもずっと大きかった。そして何故か安心できた。
大人だからだろうか。


数分後には屋敷についた。
幸村は今日の戦利品を眺めながら赤いシロップのかかったかき氷を食べている。
既に2杯目だ。
左助はメロン味のシロップをかけたかき氷を食べて終えた。
幸村が無事で本当によかった。あのまま地面にぶつかっていたらもうこの笑顔は見られなかったかもしれない。
この子を天秤にかけたら、どんなものも軽くなる。自分の足なんて一寸もかなわない。
「さすけ、おかわりするか?」
「え?うん」
「よし。おれがつくってやろう」「自分で作れるよ」
「おれがつくってやりたいんだ」
幸村はガラスの器をかき氷機にセットし、ハンドルを回した。
がりごりと氷が削られていく音がする。器にふんわりした白い山ができた。
「あじは?」
「んーメロンで」
幸村がメロンが描かれた瓶を手に取った。白い山が緑色に染まっていく。
「できたぞ」
銀のスプーンで掬い、口に運んだ。甘い。冷たい。
何故か冷たいはずのかき氷から暖かな感情が生まれた気がした。
「さすけ、たすけてくれてありがとう。
あし、けがをしたのだろう?すまなかった」
「もうあんな無茶しないでよ〜」笑って軽口を叩いているので重症ではないと感
じたのか、幸村はほっとした表情を見せた。
「おかわりするか?」
「まだ全部食べてないよ」
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