BASARA

□パフェとサンデーの違いなど問題にはならない
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学校帰りにハンバーガーなんて健全な男子高校生にはもの足りない。
かと言ってラーメン屋に行くってのもどうだろう。
ファミレスでフライドポテトやドリンクバーを頼み、可愛いウェイトレスを見るほうがいい。絶対いい。
猿飛左助と長宗我部元親がそう思っているかどうかは不明だが彼らは現在ファミレスにいた。
「だから、俺様はドリンクバーで飲み物を混ぜるのは邪道とか思うわけ」
「新しい味に挑戦しねぇのか??
男らしくねぇな左助は」
「そんなこと言ってコーラと烏龍茶混ぜて泣いたやつは誰だっけ?」
「だって色が似てるぜ」
周りから見れば彼らは不毛なことをしているように見える。
しかし彼らにとっては重要だった。


気がつけばテーブルの上のポテトは空で、見向きもされなかったパセリだけが残っていた。
別に空腹なわけでもないがお腹が満たされたかといえばそうでもない。
店員を呼ぶために左助はテーブルの上にあるはずのボタンを探した。
パッと見る。無い。
もう少しよく見る。無い。
表紙にいかにも美味しそうにパフェが写されたメニューを上げて見る。無い。


左助は必死に探していた。
だから、それを拾った少女に気付かなかったのは無理もなかった。

「あの、これ違いますか?」


左助は声のする方向、通路側に振り向いた。
赤いプリーツスカートにほっそりとした足。
紺のセーターに赤いリボン。
荒れを知らなそうな白い肌。
意志の強さを感じる大きな黒目がちな瞳に左助が映っている。
ふっくらとした血色の良さそうな唇が口を開き、声を発した。
「あの、違いましたか?」
彼女の左手にはあのボタンが握られていた。
「違わない違わない!ありがとうございます」
左助はそれを受け取る。少女はにこっと笑った。
可愛い。すごく可愛い。
しかしどこかで見たことがあるような気がする。でもこんな可愛い子なら絶対覚えているはずなのだが。
気のせいだろうか。あー可愛い。
鞄の六文銭がジャラと音をたて、少女は左助たちに背を向け自分のテーブルへ去っていった。
席は意外と近く、少女は左助たちの斜めのテーブルだった。
「残念だったな左助。連れがいるぜ。男の」
少女は嬉しそうに向かい側の男に話している。
男の顔はわからなかったがそれに興味は湧かない。重要なのはその人が彼女にとって何なのかだ。
「あ、あの子パフェ食べてる。
食べる姿も可愛いなー」
「違うぜ左助」
長宗我部が真剣な眼差しで左助を見た。
「あれはパフェじゃねぇ。サンデーだ」
「そこ重要??」
「重要」
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