BASARA

□パフェとサンデーの違いなど問題にはならない
2ページ/11ページ

パフェを見れば彼女の笑顔を思い出し、赤いリボンを見れば彼女に似合いそうだと思う。
完璧に恋に落ちた。そう言うしかなかった。自分は女泣かせだと思ったのに。女に泣かされそうだ。
「左助、てめえまだ忘れられねぇのか」
「何でおれの前にいるのが元親なんだろう。ああ、あの子に会いたい」
「現実を見ろ!!」
元親は筒状に丸めたノートで左助の頭をポカリと叩いた。
あのファミレスの出来事から左助はいつもこの調子だ。元親が何を言っても生返事だった。
「もう昼だぜ。お前、今日は購買に行くんじゃなかったか?」
「あーそうだった」
左助はいつもは自分で作っていた。だから不味かった。いや、料理の腕はいいのだが。
中身が酷い。無意識に選んでしまうのか、全て赤い食品だった。ご飯の割合が明
らかに少ない日の丸弁当や8割が紅生姜の焼きそば。
とうとう昨日は全面プチトマトで埋まってしまった。あまりに瑞々しすぎる。流石に元親ら友人たちはストップをかけた。
「また赤いものなんて買ってくるじゃねえよ?」
「いっそハバネロを買ったらどうだ。目が覚めるかもしれないぜ」
左助は少しムカッとした。


出遅れた。左助は購買に着いてそう思った。一体学校の何割の生徒がこの場所にいるのだろうと思うほど人が詰まっていた。
しかしここで諦めては男が廃る。汗まみれの体育会系や、控えめに言ってふくよかな眼鏡男がいたとしても躊躇ってはいけない。左助は人混みの一部になりに行った。
赤いものを取ってはいけない。左助は自分にそう暗示をかけながら進んだ。だから焼きそばパンの上の段のカレーパンを取ったし、赤いパッケージのストレートティーの手前の黄色のパッケージのレモンティーを取った。
うっかり目についた苺大福を離すために、いつもは買わない三色団子を買ったりもした。
「なんか疲れた……」
自分は何をしているのだろう。きっと彼女に会わなければこんなことにはならなかった。
目の前の子があの女の子だったらいいのに。
「三色団子がないぃぃ」
「だから速く行けと言ったろう。帰るぞ」
「うう……」
購買は弱肉強食の世界だ。さらに彼女は挑戦権すら放棄した。どんな顔か見たい
ものだ。
荒れを知らなそうな白い肌に意志の強さを感じる大きな黒目がちな瞳。制服の赤いリボンがよく似合う。
「!」
あの少女だった。まさに運命の出会い!!!選択肢は唯一つだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ