BASARA

□Not always
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恋をすることに壁はない。
例え相手が年齢不詳でも同性でも敵の武将でもだ。
落ちてしまえば、くだらないことは気にしなくなる。
気になるのはどうしたら相手が喜ぶのか、自分のことをもっと好きになってくれるかだ。

「おい元就、一緒に酒飲もうぜ」
「誰が貴様と飲むものか」

せっかく喜ぶと思って持ってきたのに。
まあ、これは想定の範囲内。本物はこっちだ。

「京の菓子も食べるか」

元就は目を大きくし、すっと隣りに座った。

「飲まないんじゃなかったのか?」
「食べないとは言ってない」

予想通り、釣れた。


京の菓子は美しい花の姿をもち、食べるのが勿体無いくらいだった。
飾って愛でたい。悪癖がでてくる。
横を見ると元就が菓子を細い指で摘んで眺めていた。
目を少し伏せて菓子を口に運ぶ。
口を閉じた途端微小だが、いつも見ている人ではないと分からないくらい、彼は嬉しそうな顔をした。

そう、こんな顔が見たかった。

ぐいっと酒を飲むと体の中が熱くなった気がした。
旨い。流石は島津が勧めた酒だ。
本命ではないが元就にも飲んでもらいたい。それほどに旨い。

「元就、これも飲まねえか?」
「我は飲まぬと言っただろう」
「そんなこと言うなって」

酒を口に含み、元就の口に流した。
飲み干すまで離しはしない。
正当な方法が通じないなら裏を掻け。

「ほら、旨かっただろ?」

殴られるのは承知の上だ。けれど拳は来ない。
それほどまでに怒っているのかと恐る恐る顔を見た。

「元就?」
「愚劣な!」


そんな表情がでるなんて思いもしなかった。
彼の頬が赤い。

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