BASARA

□俺の夏休み
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北国は涼しい。上田に比べれば汗の量は大分減る。
愛しい人を抱きしめて迎えるのもきっと涼しいからだ。
そう、全ては気候がいいから。

「なーんて見逃すわけねえだろ!!」
「うわっ、何すんだ!」

伊達は放った手裏剣をすぐに察知し幸村を抱いて避ける。
『抱いて避ける』というのが腹が立つ。特に『幸村を抱いて』がムカつく。
まあ、あれは威嚇みたいなものだからね。死ぬけど。

「旦那早く離れて。変態が移る」
「誰が変態だ、誰が!」
「そんなのも分かんないの?馬鹿もつける?」
「殺されてぇみたいだな、猿」
「猿!?」
「真田、こっちこい。西瓜切るから手伝ってくれ」
「西瓜!?わかりもうした!」

西瓜で幸村を釣った小十郎と西瓜に釣られた幸村が屋敷へ入っていく。
伊達が弾いた手裏剣に当たる心配はもうない。

「龍は龍でも竜の落とし子なんじゃない?!」
「猿が一丁前に話しやがって!猿山に帰りな!」

飛び交う殺気。飛び散る汗。やっぱり武器は必要だった。
お互いに武器を構えニヤリと笑う。

「此処で雑草を刈れるなんて今日はluckyだぜ」
「こっちも害虫退治ができて嬉しいよ」
「雑草」
「蠅」
「ぺんぺん草」
「ゴキブリ」
「ゴキブリじゃねえよこのミドリムシ!」
「俺だって微生物じゃねえよミカヅキモ!」
「政宗様、西瓜でございます」
「左助、西瓜だぞっ。早く食べよう!」

お互いに何事もなかったように殺気を消した。
西瓜に釣られたわけではない。幸村の笑顔に釣られてしまっただけだ。



「うまい!片倉どのは美味しい西瓜も作れるのですな」

幸村はもう一口西瓜を食べるとにっこり笑った。

「そうか?ほら、もう一切れどうだ?」

小十郎は自分の西瓜を幸村の皿にのせた。
敵将といえども褒められれば悪い気はしないものだ。

「ありがとうございます!」

幸村は満面の笑みで小十郎も口角が少し上がった。

「旦那〜種付いてるよ。はい、取れた」
「すまぬな左助」
「……オイ」
「また付いてる」
「おい」
「ほらここ」
「おい待て」
「ここか?」
「待てって」
「仕方ないなぁ旦那は。取ってあげ……」
「ちょっと待てって言ってるだろうぐぁぁっっ!!」

幸村は目を見開いて、伊達を見る。
しかし西瓜は落とさない。

「政宗様、どうかなされましたか?」
「どうしたもこうしたも何でオレがこの場所なんだ!」

左から俺様、幸村、小十郎、政宗の席で縁側に座っていた。
この位置では伊達は幸村と話せない。まあ隣でも妨害するが。

「それは左助と政宗殿が喧嘩するから」
「じゃあ猿飛とオレを入れ替えろ!」
「俺様は旦那を守るのが役目だから」
「小十郎!」
「政宗様を敵将の隣にはさせません」
「お前は俺の背中を守るんだろ!」
「はい、横も守ります」
「横は背中じゃねぇ!」

伊達は一口も食べていない西瓜を2つに割った。
甘い汁がぼたぼたと垂れた。地面が濡れる。

「政宗様」
「なんだ」
「食べ物を粗末にしてはいけません!!」

バチーンと頬を叩くいい音がした。
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