BASARA

□She is boy
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少年漫画の主人公は大抵可愛い女子に恋をする。
可愛い女子の机の周りにはライバルの男子がずらりと囲む。
その女子は男子のアイドルで、好かれているのに何故か彼氏がいない。
かと言って主人公が行動を起こすかといえば臆病風に吹かれて何もしない。


今、俺はそんな状態だった。


「はあ……」
「なーに溜め息ついてんだ幸村」
「うわっ」

いきなり目の前にポニーテール男とリボンを付けた小猿が現れた。ペットを学校
に連れて行っていいのかと疑問に思ったりもする。

「慶次殿には関係ない悩みでござる」

主人公にはモテモテで人気者の友達がいる。
俺も例外ではないということか。

「あ、わかった。恋の悩みだろ!そして相手は猿飛さすがちゃん!」
「慶次殿声が大きい!」
「お、当たり?」
「!」

何でわかったのだろう。誰にも言っていないのに。
恥ずかしい恥ずかしい破廉恥だ!

「いやー幸村がやっと恋に目覚めたか。俺は嬉しいよ」

わざわざハンカチを出してまで泣きまねをするのか。
まあ慶次殿が何度も恋はいいと言っていたのに、俺はそのたびに否定していたからかもしれない。
しかしそんなに大袈裟だとこっちが恥ずかしい。
肩に乗っている夢吉殿も目を覆っている。飼い主の真似はやめてくれ。

「よし、俺がキューピットになってやるよ!」
「きゅうぴっと?」
「そう!恋の味方前田慶次が2人を結んでやるよ!」
「ひ、必要ない!」
「恥ずかしがんなって。ほら、あの子が見てるよ?」
「えっ?」

猿飛殿を見ると、確かに話しかけてきている男子を無視してこっちを見ている。
あ、目があった。


にこっ


ぼんっ(顔が赤くなる音)


今、笑ったよな。俺に向けて笑った。俺に笑った。
うわ、うわ、胸が熱い。頬が熱い。嬉しい。熱い。

「熱いねー。もしかして脈ありかもよ?」
「俺に笑ってくれた……」
「幸村?おーい」

可愛い笑顔だった。可愛くないと言う人がおかしい。
目もあったし、俺のことを見ていたのだ。
嬉しい嬉しい嬉しい。胸が熱い。頬が熱い。血液がぐるぐるしている。
これが恋なのか。幸せで、なんだかふわふわする。
慶次殿の声なんて少しも聞こえなかった。



今日の体育は外でドッチボール、しかも男女混合だ。
日が当たって汗が吹き出る。女子は持参したタオルで拭いていた。

「幸村、俺思いついた!」
「思いついたって何を?」

授業中は喋るなとよく言われるが、体育は例外だ。

「恋の大作戦だよ!」
「それは断ったでしょう」
「照れない照れない」

照れてない。
とりあえず、こ、恋の……破廉恥だ。慶次殿の作戦はこうだった。

最初に猿飛殿と某が同じチームになる。
味方敵を共に減らし、自然に猿飛殿と某が残るようににする。
猿飛殿が狙われたとき、某が華麗に助ける。
猿飛殿が某を格好良いと思う。
そしてそのまま、こっここっ、恋に!


「良い作戦だろ?これで彼女もメロメロ!」
「しかし、同じチームになれるとは限りませぬ」
「俺とチーム分けしたふりをしてさすがちゃんのチームに行けばいいんだよ」
「それは卑怯でござる!」

猿飛殿がこちらを見ている。大作戦が聞こえてしまっていたらどうしよう。
俺は卑怯じゃない。男は正々堂々と。

「慶次殿!!」


グーとパーで分かれましょ!!





どんな作戦でも予想外に綻びがある可能性はある。
コート内にはある部分だけ男子の塊があった。

「さすがちゃんにボールを当てさせはしないぞ!」
「さすがちゃんを守るんだ!」

猿飛殿を囲むさすがちゃん親衛隊の存在をすっかり忘れていた。
助けるどころか猿飛殿の姿が見えない。
作戦は無理だが、同じチームになれただけでも幸せだと思うことにしよう。

「もう、みんな猿飛さんのところ行っちゃって」
「頼りになるのは真田君だけだよ」

ほとんどの男子は猿飛殿の護衛に行ってしまってまともに動けるのは女子ぐらいだ。
対する相手チームの男子は猿飛殿と同じチームになれなかったためか、やる気以上に殺気があった。
明らかにこちらの不利。しかし勝てない訳ではない。

「頑張ろうね真田君」
「ああ、頑張ろう!」


純粋にゲームを楽しむ。今はそれだけだ。
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