BASARA

□She is boy
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「うぅぅぉぉぉおっ!!」
「うわわぁぁ!」

ばしーん(ボールがあたる音)

「真田君格好いいー!」
「見えないんだからどいてよ!」
「かすがちゃんは僕たちが守るからね!」
「誰もそんなの頼んでない!」

勝負は燃える。思わず叫んでしまうほどに燃えてしまう。
相手チームの人数はあと4人だ。こちらも同じくらいしか残っていない。

「暑い暑い。手加減してよー」
「真剣勝負に手加減無し!!
だいたい、慶次殿も我がチームに沢山あてたではないか」
「あんな塊、的当てゲームにもならないよ」

ゲーム中、さすがちゃん親衛隊は体をはって彼女を守っていた。
猿飛殿に来たボールは受け取ることはせずに両腕を開き、体に当てていた。
言葉通り体をはって守った。そして的となったのだ。
戦力外の彼らはボールに当たった後こういうのだ。

「さすがちゃんを守れて本望だ!!」
「はい、後3人ー」

これでさすがちゃんに格好いいとこ見せられるぜ。
ウインクした慶次殿からそう伝わった気がした。

「えいゃっ」
「うわっ!!」

ばしーん

よし、こっちも後3人。心の中でガッツポーズ。

「幸ちゃん容赦ないね」
「幸ちゃんと言うな!」

ばんっ

慶次殿の投げたボールが最後のさすがちゃん親衛隊に当たった。
慶次殿だって容赦ないではないか。

「やっと視界が良くなった」

にっこり笑う。
ボールを持った猿飛殿は迷いもせずに慶次殿のほうへ投げた。
ボールは一瞬見えなくなり、慶次殿……の後ろの人に当たった。

「すげぇ、今の捕れそうにない」

慶次殿が思わず避けるほどだ。当たった人は腹を抱えてうずくまっていた。

「猿飛、お前少しは手加減しろ!」
「いやーついカッとなって」

かすが殿がビュッとボールを投げた。こちらも速くて見えない。
しかしさすが殿も負けてはいない。しっかりボールを捕っていた。
俺が守る必要はないかもしれない。むしろ、邪魔になってしまうかもしれない。
猿飛殿とかすが殿の速すぎるキャッチボールを見ていると、突然ボールが外野に
入った。
男子がボールを取った。俺に向かって投げる。
明らかに顔を狙っていた。
捕ることはできない。避けること……もできない。

此処で避けたら猿飛殿に当たる。

「くっ」

予想通り顔面に当たった。

「ちょっと大丈夫!?」
「大丈夫、肩から上はセーフだ」「そういうことじゃなくて!」

チャイムが鳴りそうだ。同人数で引き分け。
勝っていいところを見せたかったのに。間抜けなところで終わってしまった。



「すまぬ、失敗してしまった。慶次殿が考えてくれたのに」
「大丈夫だって。見えてなくても活躍していたことは知ってるはずだよ」
「しかし最後に顔面だぞ。間抜けだと思われたに違いない」
「またそんなこと言って。パン食って元気だしな」

いつもはご飯を食べると満たされる気がするのに、今は落ち込みで元気がでない

格好悪い。きっと猿飛殿はそう思っただろう。

「幸村君大丈夫?」
「猿飛殿!」

思ったことを口に出していたのか。心の準備をしていなかった。
慶次殿がニコニコ笑う。成功したな!そんな感じだ。

「ありがとう」
「え?」
「あたしが後ろにいたから、庇って避けなかったんでしょ?」

知ってたのか。なんだか恥ずかしい。照れ隠しに紙パックの苺牛乳を飲んだ。

「お礼と言ってはなんだけど、お弁当の卵焼き食べてくれないかな」
「卵焼き?」
「うん、手作りの」

猿飛殿の手作り。すごく食べたい。
猿飛殿にもらった卵焼きは綺麗な形をして輝いているように見えた。
手作りなんて久しぶりだ。一人暮らしをしてからずっとレトルトだった。
卵焼きをぱくっと口に入れた。苺牛乳よりも甘く感じる。

「美味い」
「本当に!?よかった!」

猿飛殿が嬉しそうに笑う。可愛い。

「そうだ、さすがちゃん」
「何?前田君」
「幸村、ずっと買い弁なんだよ。だから弁当作ってやってくれない?」
「けけけ慶次殿何を言ってるでござるか!」
「だって食べたくないの?(さすがちゃんの)手作り弁当」

食べたい。とても食べたい。
でもいきなりはないだろう。まともに話したのは今日が初めてなのに。

「いいよ、作ってあげる」
「いいんでござるか!?」
「こんなに嬉しそうに食べてくれるんだもん。作りがいあるよ」
「よかったね幸ちゃん」

慶次殿がまるで小さい子を誉めるように俺の頭を撫でた。
幸ちゃんではないと何度も言っているだろう!

「幸ちゃんねぇ。あたしは旦那って呼ぶね」
「旦那!?」
「お弁当作るなんて奥さんみたいじゃない。ね、旦那」
「いきなり飛んだなぁ。良かったね、だ・ん・な」
「旦那って呼んでいいのはあたしだけ!」
「あはは、恋だねぇ」



沸騰10秒前。何も考えることができなかった。
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