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□椿山課長の七日間パロ
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正体の秘匿、復讐の禁止、あともう一つ。期限は7日間。姿が変わる。
「やり残したことがあるんだ」
自分が死んでからわかった。どうしてもどうしても伝えたいことがある。彼にもう一度会いたい。
「正体を知られてはいけないことはわかってる。別に復讐したいわけじゃない」
だから地上に帰してくれないか。
眩しい。日の光がこんなに明るく感じる。ここはどこだ。
真っ白で清潔なベッドは少し硬い。窓ガラスにショートヘアの朱色の17歳くらいの少女が映っていた。
後ろを見ても誰もいない。もしかして幽れ
『それはお前だ』
頭に響く威厳のありそうな声。痛い。
『ここはバチカルの宿屋。ベッドの上に道具袋が置いてあるだろう。そこから必要なものがでてくる』
「うわー髪が短い。ていうか胸がある!?」
ちらっとズボンの中を見た。ない!!女になったのか……俺。
『くれぐれも正体がバレないようにしろ。もし知られたら……』
「怖いことになる」
それは何度も聞いた。しつこい程聞いた。
とりあえず屋敷に行こう。そうしないと何も始まらない気がした。
よく考えてみれば俺は屋敷から出た記憶がなかった。当然、バチカルに住んでいたとしても道はわからないわけで。外にでてから気付た。
ちょうど近くにいた男に聞くことにした。勿論丁寧語を使って。
「すみません、ファブレ邸の道を尋ねたいのですが」
「へぇ可愛いじゃねぇか」
「へ??」
男はジロジロと女になった俺を見た。ちなみにルークは可愛いと言われてもいまいちピンとこない。
(可愛いって……いやでも今は女なんだから嬉しいことなんだろうけど……なんか複雑だ……)
「オレについてきな」
「ありがとうございます!」
親切な人でよかった。そう思っている俺に男のいやな笑いに気づけというのは無理な話だった。
階段を上り、建物の間通って、明らかに違うと気付いたのは裏路地のところだった。
「あの、ファブレ邸に行きたいんですけど」
「そうだな」
「違う道じゃありませんか??」
「そうだな」
もしかしてこの人方向オンチだったのか!?相手を間違えたな……。
「もしかして迷子なのか……?」
「違うぜ」
「うわっ」
いきなり腕を引っ張られ、暗い路地の奥へ奥へと連れていかれそうになる。
「誰か助けて!!」
「叫んだって誰も助けてくれないぜ。さあ、大人しくしな」
「誰か!!」
本当に相手を間違えた!!誰か助けて!!ガイ!ガイ!!
「そのお嬢さんから手を離しな」
ガイ!?本当に来た……。思わず名前を呼びそうになったが我慢した。バレてしまってはこわいことになる。
まだ俺の腕を離さない男にガイは剣を向けた。
「手を離せと言ったんだ。聞こえなかったか??」
ガイの目が鋭くなった。とても怖い、否定を言わせない瞳。
男に伝わったのだろう、俺の腕をぱっと離した。
「……クソッ」
「わっ」
「おっと」
男は俺を突き飛ばし一目散に逃げて、すぐに見えなくなった。
突き飛ばされた俺はその方向にいたガイに受け止められた。危ない、地面にダイブするところだった。
「大丈夫かい?」
「なんとか……」
ガイの腕が俺の腰に回っている。あれこいつ確か女嫌いじゃなかったっけ。ガイもそれに気付いたみたいだった。
「俺、女性を、抱きしめてる!?」
「あ、ごめんなさい!!」
俺が離れようとするのと反対にガイは俺をさらに強く抱きしめた。
「症状がでてない!!治ったんだ!!」
ガイはめちゃくちゃ嬉しそうだったが、俺は息ができず苦しかった。