Other

□椿山課長の七日間パロ
2ページ/5ページ


「いきなり抱きしめたりしてすまなかった。」
「いや、助けてくれてありがとう」

あれから俺が「くっ苦しい……」と言うまでガイは俺を離しくれなかった。
先ほどまでのいきさつを話し、今はファブレ邸に連れていってもらっているところだ。

「俺は女性恐怖症でね、発症しなかったのは君が初めてだよ」

それは俺が元男だからだと思うよガイ。

「俺の名前はガイ。君は??」
「お……私、の名前は、バーミリオン」

即興で考えた名前だ。センスの無さは目を瞑ってほしい。俺はバーミリオン。俺はバーミリオン。

「バーミリオンか。よろしくな」
「ああ、よろしく」
「……ところで、ファブレ邸に何の用事があるんだ??」
「えっ?えっと……」

理由、理由……観光??いや駄目だ、怪しい。
ていうかぶっちゃけガイに会いたかったんだよな。予期せぬ出会いだけど。

「……あ、あの、ルーク様に会いたくて来たんだ」
「ルーク様に??……そうか誘拐前に……」

なんか都合よく解釈してくれているみたいだ。助かった―。
ガイは悲しそうに顔を歪めた。

「残念だが、ルーク様は四日前に亡くなったんだ」
「そんな!?ルーク様!!」

知っているよそんなこと。だって俺は“ルーク様”なんだから。
ただ、ガイが俺の死を悲しんでいて嬉しかった。もし嘘ではなかったらだけれど。

「ルーク様はどんなふうに屋敷を過ごしてた??」

ガイは視線を下げ、表情が見えなくなった。

「ルーク様は……あいつは誘拐されてから別人みたいに変わった。
我が儘で、子供みたいだった」
「う……」

否定ができない。ごめん、ごめんなガイ!!

「自由奔放でよく笑って、無邪気でな。
良くも悪くも純粋なやつだったよ。
みんな悲しんでいた。
……ごめんなルーク」
「ガイ、お……ルーク様はきっと幸せだったと思うよ」
「どうしてそう思うんだ?軟禁されていたのに!!」
「だって、そんなに思ってくれている人がいるんだ。嬉しい……と思う」

断言できる。これは俺の本心。死んでから気付いたんだ。遅かったけど。

「ルーク……」


「ガイ!!」

しんみりした雰囲気をメイドの声が消す。メイドは息を荒くしてこっちに走り寄って来た。

「大変よ、ガイ!!ルーク様がルーク様がっ」
「落ち着いて。ルーク様がどうしたんだ??」
「ルーク様が帰って来たの……」
「ルーク様は亡くなっただろう。そんなことは有り得ない」

実際、俺はここにいるけどね。しかしルーク様が帰ってきた??

「違うわ……“本物”のルーク様が帰ってきたの!!亡くなったルーク様は“レプリカ”だったのよ!!」
「レプリカ!?」

本物??レプリカ??
レプリカってなんだ。偽物なのか。
わからない知らない理解できない理解したくない!!

「大丈夫かバーミリオン。顔色が悪い」
「俺は……」

俺はルークだ。バーミリオンじゃない。ルーク・フォン・ファブレだ!!
目の前が真っ暗になる。


地獄より暗いのかはよくわからない。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ