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□プロローグ
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静まりかえる漆黒のよる、満月がこの部屋の灯だった。
「お前を呼んだのは他でもない。…お前も勘づいているだろう。」
「……」
威厳と重みに滲んだ彼の優しさは声で現わされている。
沈黙は長くゆっくり空気になって重なる。
「…お前、この組をばらしてるな。」
「……。」
「お前が来てからもう10年になる。この組の中じゃーお前がトップだ。」
声が闇へ消える
沈黙が訪れる
それが心地よかった。
ー貴方がこんなに
優しくなければー
「…お前、何考えてる。」
「……。」
問われた質問は俺には決して、答えられるようなものじゃない。
目許は鋭い鷹の目。
それが怒りではないのはわかっている。
(…ありがとう。)
無くしたくない場所
無くしたくない時間
無くしたくない人
「…ごめん、なさいっ。」
ー大切なモノを失う怖さを知らなかったのにー
ー…バーンッ
その人は最後まで
優しい笑顔をしていました。
end.