現在
□始まりは。
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「ねぇねぇ。ベジータ君、見なかった?」
「お、俺しらねぇぞ。つーか、お前ら、ぜってー殺されるぞ。」
「ふぅん。まぁ、いいわ。自分で探すから。」
「・・・・・。」
世界に名だたる大企業、カプセルコーポレーション。
いくつもの棟が点在する、その中の一棟。
家族内だけが使用するリビングのソファーに寛いでいたウーロンの心中は、穏やかなものとはかけ離れていた。
聞いただけで背筋が凍る名を、今し方ブルマから聞かされた為である。
真っ青になるその表情を気にも止めずに、ブルマはリビングを後にした。
「あ、あいつ。なんか浮かれてねーか?」
「そうだよっ。普通はまず、ヤムチャ様を殺したヤツなんか、家に招かないのにさっ。」
鼻歌混じりに大股で去っていくブルマを、唖然とした表情で見送るウーロン。
その隣でフワフワと浮くプーアルは、珍しく強い口調で怒りを露わにしていた。
ドラゴンボールのお陰で、クリリン共に、尊敬してやまない師であるヤムチャが生き返った事に関しては、心底に喜んだ。
大企業カプセルコーポレーションの1人娘。
ヤムチャの恋人でもあり、ウーロン、プーアル共に居候を快く引き受け、古くからの仲間でもあるブルマ。
そのブルマが本日。
ベジータと言う名の異星人を連れて来るまでは…。
(あ。いたいた。)
大型の飛行機で凱旋帰還して早々に、一息つく間もなくナメック星人達に住居を与えたブルマ。
彼らが水しか口にしない事は知っていたが、シャワー、ベッド等の使い方は1から教えなければならない。
ざっと説明して、あっという間に三時間。
説明し通しのブルマは、疲れた体を押して、もう1人…1番の最重要人物の姿を見つけ出した。
(放っといて、暴れられたら大変だわ。)
三階の廊下から望む中庭。
テニスコート2面程の広さには、ブルマのママである夫人が植えた木々や、花々が所狭しと咲き誇っている。
そのほぼ中心に位置する。
一番の大きさを誇る大樹の根元。
特徴的な髪型に、ボロボロの戦闘服を纏ったままのベジータの姿があった。
(…寝てるのかしら?)
三階から降りて、中庭の入り口にと来たブルマの鼓動は自ずと高まっていた。
怖い感情は少なからずあるにせよ、興味の方が先に立った。
(極悪人じゃ無いことは確かなんだし、危害は及ぼさない筈だけど。)
恋人でもあるヤムチャを殺した張本人。
ナメック星では、“動けば殺す”と脅された。
小柄な也から発するオーラたるや、常人であれば一歩たりとも動けなくなる程の殺伐さを纏わせている。
それでも。
(なーんか。寂しそうね。)
中庭の入り口から、ベジータを遠目に見ていたブルマの感情はまるで違った。