現在

□漆黒の少年。
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「あんたってば、まーた妙な物作ってんじゃないでしょうね。」


「そんな事ないって!今度のはすっげー発明なんだからさ!」


カプセルコーポレーションの研究施設。


一線を退いて直、理事として全商品を総合管轄しているブルマは、全くとしてラインの崩れていないその体に白衣を纏って、小さくため息を吐いた。


トランクスが20歳になった誕生日を堺に、かつてブリーフが職務を当たっていた社長業を継がせて、早三年の月日が流れている。


それでも、穏やかな隠居生活を送るにはほど遠い。


頭は優れていても、経営には全く向いていないらしく、今までもたびたびトラブルを起こして来ていたのだ。


そのトラブルのほとんどの原因がトランクスが開発する商品。


奇抜なアイディアは褒めるべきであるが、奇抜すぎて大衆に受け入れ難いのもまた事実であった。

「で?今度は何を作ってるわけ?」


いつの間にこんな物を作りあげていたのだろうか・・・。


研究施設のど真ん中に鎮座する物体を見上げて、ブルマは問いかける。


天井から床まで占める巨大な物体は、カプセルの様な曲線をフォルムとし、数えきれない程のコードにと繋がれ奇妙な駆動音を発していた。


「へっへー。どうしても知りたい?」


得意げに上体を仰け反らせる姿は、とても20歳を過ぎた大人の男には見えない。


(甘やかし過ぎかしらね・・・。)


かつて出会った未来から来たトランクスとはまるで別人の息子に、ブルマは苦々しく微笑んだ。


「教えておいた方が無難よ?またベジータにどやされたいの?」


「う・・・。わ、分かったよ。」


父の名前を出されて一気に意気消沈したトランクスは、その場を取り繕う様に頭を欠いた。


「これは、時空を飛び越える装置。」


「は?」


唐突に息子から発せられた言葉に、ブルマは思わず唖然として目を見開かせた。


「だーから。これに乗れば、未来にも過去にも行けるってこと。つまりは、タイムマシンだよ。」

「た、タイムマシンて、未来の私が作った???す、凄いじゃない・・・。」


ブルマであれ、一度は作って見ようと取りかかったが、ある一つの公式がどうしても解けず終いについには諦めていた代物。


それをまさか、トランクスが開発してしまうとは・・・。


「ほ、本当に動くんでしょうね?」


「うん!理論上ではね!試運転はこれから。乗る?」


手のひらサイズのリモコンを親指にて操作する。

瞬間、カプセルの様な物体の正面にと亀裂が入り、重々しく外装が横にと開いていった。


「私が実験第一号ってわけ?まぁいいわ。命の危険は無いんでしょう?例え危険な目にあっても、ベジータが助けてくれるでしょうし。」


「・・・俺を信用しろよ。」


いい歳をしても平然とオノロケを口にするブルマに、トランクスは小さくため息を吐いた。


「で?どこ行きたい?」


「そうねぇー。未来は嫌ね…。自分のこれ以上歳取った姿なんて見たくないし。だとしたら過去かしら?初めて孫君と出会って、ドラゴンボール探しの旅に出た時に行ってみたいわ…。でも、やっぱ…。」


「やっぱり?」


少女の様にくるくる表情を変えて、頭を巡らし出した結論にトランクスが問い掛ける。


と同時、ブルマはトランクスに小さく目配せして言った。






「…やっぱり…。」
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