現在
□我がまま。(後編)
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「あんたねぇ。一大財閥のご令嬢がこんな事していいと思うの?」
「あら。一大財閥のご令嬢だからこそ許されるのですわ。」
(まーったくもうっ。これだからお嬢様ってヤツは。常識を知らないのかしら?)
自身がカプセルコーポレーションとして世界に名だたる大企業の一人娘なのを差し置いて、ブルマは深く溜め息を吐いた。
商談と言う名の元、50階もに連なる高層ビルにと足を踏み入れたが…。
応接間に通され、差し出された珈琲を流下した途端に急激な眠気に襲われた。
睡眠薬を盛られたと気づくも遅し、その体は薄暗い地下に拘束されていたのだ。
ブルマの耳元に、ジャラと冷たい金属音が響く。
椅子に座らされ、両手は後ろで鎖に繋がれていた。
「あんたが、監視カメラを仕掛けたのね。挙げ句SPを使ってトランクスを攫おうとしたのは分かったわ。けど、何が目的?」
拘束されて既に一時間。その最中、飲まず食わずで身動き一つすら出来ない。
それでもブルマの双眼は真っ直ぐに前を見据え、ここに来た時と何一つ変わらない強い光を放っていた。
「あら。随分と強気ですわね。貴方は捕虜ですのよ?それをご存知?」
後ろに屈強な男を3人従えて、佇む女。
ブロンドの長い髪にけばけばしい化粧。
その下の赤くルージュが引かれた唇は小さく戦慄いていた。
ここまでは完璧。
唯一、トランクスとか言うガキンチョは取り逃がしたが、全ての駒は揃った。
…そう。
街で偶然見た、あの日から、強く焦がれる男の存在を欲する為に。
しかし、何かが彼女…キャピアの心に影を落としていた。
今更ながら後悔した訳では無い。
ブルマの覇気に恐れを抱いた訳では無い。
見えざる焦燥感。
立場は確実に此方が上だと言うのに…。
「お嬢様っつ!例の男が此方にっつ!!」
戦慄く唇を固く結んだキャピア。
と同時。
荒々しくも地下室のドアが開け放たれる。
目元にサングラスを掛けたスキンヘッドの男は、まるで恐ろしいものでも見たかの様に、息を切らしていた。