現在

□桜。
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「随分と冷えるな。」


「あら。あんたでも寒いなんて思うの?」


でも、桜が咲く季節はこんなものよ。と付け加えて小さく笑う。


この偏狭な星に芽吹く小さな小さな花。


それが大地に根を張り、枝を伸ばし、こんなにも美しく淡く光を宿す。


いずれは散る。
この花を、まるでお前の様だと言ったならば、どんな反応を示すだろうか…。








西の都からジェットフライヤーで足を延ばす事10分。


建物より緑の山々が目立つこの地は、名を東の都と言う。


寒暖さが厳しいこの地の特色でもある。
ここにしか生息しない木々。


何の変哲も無い筈の枝には、この季節にだけ咲く花がある。


名は桜。


それを見に行こうと強引にも連れて来られたのは、つい今し方の出来事。

ベジータは、その大樹の根元に立ち竦み怪訝そうな表情を浮かべた。


冷える。と言ったのは、女の体を案じての事。


3月も後半に差し掛かったとは言え、吹き荒ぶ風は冷たさを纏う。


夜ともなれば尚更。


何故夜か?と訪ねれば。夜桜って素敵なのよ。と返答が返ってくる。


実に不可解な。
それでいて、桜を照らす為の光の中、笑みを浮かべる彼女を正直に美しいと思った。


白く光沢する滑らかな肌。
風に舞い、そこに降り下りる蒼の髪。


冷たい風によるものだろう。
その頬にはやんわりと赤みを宿す。


桜の木を見上げる瞳は光を取り込み、宝石の如く輝く。
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