現在

□限界。
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「ねぇ、トランクス。ベジータ見なかった?」


「あれ? さっきまで居たのに…。重力室かなぁ。」

「それならもう見てきたわよ。」


避けられている…。
あからさまに拒絶されている。


ブルマは深く溜め息を吐くと同時、ガックリと肩を落とした。


(私…何か気に障る事したかしら…?)








何処までも抜ける青い空に、大小様々な雲がゆっくりと形を変えて浮遊する。


暖かな柔らかい日差し。爽やかに流れる静かな風に、時折混じる香しい花々の香り。


(ここにも居ない…か。)

壮大で、何処か心穏やかにさせる景色を愛でる間もなく、ブルマは再び溜め息を吐いた。


3日間…。


ベジータに触れていない。


触れていないのならまだしも、姿すらマトモに見ていない。


(まるで、追いかけっこだわ…。)


カプセルコーポレーションの中心に位置する。
夫人が誇る中庭。


四季折々の花々が咲き誇る中の、一本の大樹の根元。


そこに体を預けて座り込み、空を仰いだ。


…ベジータが行きそうな所は全て探した。


ラボ。
書斎。
重力室。
リビング。
そして中庭。


そこに居た人に聞けば、いつも“ついさっきまで居た”と返答が返ってきた。


つまりは、ブルマの“気”を察知して、辿り着く前に居なくなっているのを意味する。


けれども、ブルマには避けられている理由が見当たらない。


広いカプセルコーポレーションを右往左往。


このままではラチが開かないと意を決したブルマは、ポケットからカプセル入りのケースを取り出した。


その中の一つ。
ジェットフライヤー入りのカプセルを右手で握りしめる。


今から行く場所。
ベジータの自室に居なければ、世界中飛び回ってでも追いかけようと思った。


嫌われたなら嫌われたで構わない。
ただ避けられている理由を知りたい…。


その為なら何だってする。
世界中でも宇宙中でも探し出して、問い詰める。

心の奥底に芽生えた黒い感情に蓋をして、ブルマは足早に中庭を後にした。
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