現在

□再会と嫉妬。
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柔らかな日差しも心地良い昼下がり。


予想外に上がった気温の中、オフィス街にと消えるサラリーマンは皆、スーツの上着を片手に抱えている。


皆が皆、足早に。
額に汗を流し歩くアスファルトの上。


白地に様々なカラーが施されたピンヒールを軽やかに鳴らし、ゆったりと歩く女の姿があった。


「今日もいい天気ねー。」

こんな日差しが強い日は、帽子を目深に被りたい。


照りつける太陽を少し睨みつけながらも、ブルマは上機嫌だった。


少し伸びた髪を、行きつけの美容院でカールして貰った。


それが帽子を被らない理由の一つ。


そして、もう一つは今から会う男に髪型を誉めて貰いたい為。


(言葉…では無理ね。あいつが、綺麗だ。なんて言ったら、それこそ天変地異が起きるわ。)


歩く度に軽やかに動く蒼の髪。


日の光に時折透けて、紫色を発する。
滑らかに形を変えるウェーブに、自ずと足どりも軽やかになった。


もう直ぐ待ち合わせの時計台。


華やかな花柄のワンピにカーキ色のジャケット。派手さは無く、彼女の美しさを引き立てたコーデ。


先ほどから多くの視線を浴びていた。
それに気にするでも無く、右手を軽く上げる。


視線の先。
時計台の真下で、目的の男の姿を見つけたのだ。

「ベジー…。」


相も変わらずな仏頂面。が、直ぐに異変に気がついたブルマの声は途中で途切れた。


殺伐としたオーラがナリを潜めて居る。
厳しい視線も、どこか穏やかに見えた。


その彼が見据える先。
ブルマで無い女が、コロコロと鈴を鳴らす声で微笑んでいる。


その女には見覚えがあった。
しかし全身から血の気が引いた感覚に、ブルマは微動だに出来ない。


それに気付いた女が先に声を掛ける。
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