現在

□雷雲。
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「ねぇ…。これって最悪な状況?」


見上げれば、雷雲轟く黒い雲。
首までドップリ浸かった海はうねり、時折高波を上げている。


「うるせぇ!元はと言えば、貴様が海に行きたいなどと抜かしやがるからだ!!」


飛べば雷に直撃。
高波に囲まれては、岸を見つけるのは困難を極める。


売り言葉に買い言葉でブルマと共に海に出向いた事を、ベジータはほとほと後悔していた。


重力室を撤去するだの、食事は抜きだの。
喧々囂々とまくし立てた挙げ句、トレーニングに必要な鉱石が海の底に沈んでいると言い放った。

着いて早々に、何処だ?と問いただせば。
少しは楽しみましょう。と言い出す始末。


呆れて帰ろうとした矢先、ブルマが海で足をつり、今現在に至る。


不幸だったのは、ブルマを抱えて飛び上がろうとした途端に、雲が雷を纏った事。


更には、背後から唐突にも大口を開けた巨大鮫に追い掛けられ、ブルマを抱えては気弾も放てず逃げざるを得なかった事。

広大な海のど真ん中。
女一人を抱え、ひたすら立ち泳ぎは苦になる事はないが。


「ねぇ〜。お腹すいたわ。とりあえず、泳がない?岸に辿り着くかもだし。」

言おうとしていたのを先に言われた挙げ句、ブルマの無計画さにベジータは頭を抱えた。


目的も定めず闇雲に泳げば、体力をすり減らすだけでなく益々岸から遠ざかる恐れもある。


(儘よ…!)


しかし、このまま高波が治まるのを待っていては、漂流より先に餓死しそうだ。


一か八か。
雷雲轟く雲を見上げて、ベジータはゆっくりと泳ぎ始めた。
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