現在

□衝動。
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「ねぇねぇ。サイズ測らせてくれない?」


「サイズだと?」


その女は毎度のごとく、無遠慮にズカズカと部屋に入り込んで言う


眉根を寄せ問いかけると、突然腕にヒンヤリとした何かが押しつけられた。


「な・・・何だ。これは?」

「だからー。サイズ測るの。戦闘服のアンダーシャツは動きを阻害しないように、体のラインピッタリに作らなきゃでしょ?」


細くて長い白地に、幾つもの数字が記された物体

シュルシュルと音を立てて引っ張りだしては、上半身のあちらこちらに巻き付けていく


「あんたの居たとこも、こうやってサイズ測ったの?」

「・・・光を照射された。」

「あー、なるほどねぇ。物体に当たるまでの時間で距離が分かって同時に寸法も分かるのね、すっごい技術だわ。」

女は感心したように言うと、真っ正面に回り込んで微かに首を傾げた。


「・・・衣服が邪魔ね。脱いでくれる?」

「な・・・!そこまでせんと計測出来んのか?」


「詳細には無理ね。」


他人に肌をさらす等


ましてや、この辺境の惑星の無力な女の眼前にさらす等


有り得ないと思考を巡らせたが、
低文明な星では致し方ないのだと思い直した。


「うわ・・・やっぱすっごい筋肉ね・・・ただ厚いだけじゃなくて、均整が取れてるわ。」


シャツを脱ぎ捨てると、女はマジマジと胸部腹部を見据えてくる。


挙げ句、下品この上なくペタペタと触れてくるのには辟易した。


「・・・サイズを測るんじゃなかったのか?」


「あ。ごめんごめん、つい見とれちゃって。」


この女に、恥じらいといった文字がないものか


頭を抱え、軽くため息をはき出した


その時だ。


「!!!」

「やっぱり!!あんた背が随分伸びてるじゃない!!」


鼻孔を擽る甘い香り


絹のように美しい蒼の髪


どこまでも細く、そしてこの上なく柔らかな


その全てが、俺の手中にと飛び込んで来た。


「な・・・な・・・」


「へぇー。重力室ばっかり籠もってたから、てっきり縮んじゃうかと思ってたけど、成長期ってやつなの?」


女のたおやかな左腕は、俺の背中に


右手は頭部に添えられる


背の高さを測るような仕草


突然の事に空いた口が塞がらず、思わず視線は一点にと奪われた


「易々と俺に触れるな・・・!」


「あ・・・ん・・・!ちょっと位、いいじゃないのよ。」


小さく
しかし存在を主張するかのように朱に色塗られた艶やかな唇


ゾワリと這い上がる感覚に腕を払い除けると、バランスを崩した女が此方を見上げ頬を膨らませた。


ゾワリ


またも妙な感覚が、俺の全身を支配する


女が尻餅をついた形で見上げる場所は、ベッドの上


この俺の胸中を見透かすかのように、じぃと見上げる蒼の瞳に何故か吸い込まれるような感覚に襲われた。


白く透ける肌
下品この上ない格好の胸元から覗く、たわわな胸を覆う深紅の布


一体、これのどこが肌を保護するのかと思わせる腰からの短い衣服


緩やかなラインを描く太腿


そして、ちらりと見えた・・・


プッツン


「・・・ベジータ?どうかした?」


微動だにしなくなった俺を不思議そうに見上げる


「・・・黙れ。」

その小さな顎を掴んで、吐き出される吐息全てを飲み込むかのように


俺は・・・










「きゃーーーーー!!!いい!!!いいわ!!!」


こちらはC.Cの要とも言うべきラボ


試作品段階の戦闘服を抱え、妄想にふける一人の女の姿があった。


「っふっふふ。そうよねー。私の魅力には、あの堅物もイチコロよねー。」


アンダーシャツを作るなら、採寸しなきゃ


そう思い巡らせて脳内に湧いてでたのは、かの男とのやりとり


妄想が広がって、最後の最後ではキスシーンまでも想像してしまった


(・・・って、何考えてんの。あんたには、ヤムチャが居るでしょうが)


他の研究所員の痛い視線もなんのその


一人ぶつくさと言うブルマはまだ


自分が恋した事に








気づいていない。






end

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