現在
□漆黒の少年。
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「い…痛たたた。」
尾てい骨を強く大地にと打ち付けたブルマは、その顔を歪めて小さく呟いた。
「ここ…どこ?本当に着いたのかしら?」
辺りを見渡しても、人の気配は無い。
乾いた赤茶の大地には、草木は一本も見当たらない。
怖い程の静寂。
空気までもが赤黒い惑星。
何故か息をする事が苦しく感じた。
(そ、そういや。重力が地球の10倍だったわね。どうりで体が重たい筈だわ。)
ゆっくりと体を動かす、手を動かす事すら酷く困難に感じた。
(ここって本当に惑星ベジータよね?王宮とかあるのかしら?)
タイムリミットは一時間。
その間に、幼いベジータに会わなければならない。
一目見るだけでもいい。頑な迄に過去を話そうとしないベジータ…。
トランクスが設定した時期にと辿り着いたならば、ベジータは今、八歳の少年である筈。
彼が如何なる過去を生きていようと、全てを受け入れてあげたい…。
ブルマのそんな強い思いが、その重たい体を動かした。
(はぁー…。せめてジェットフライヤーでも持って来て置けば良かったわ。)
右足を上げる。
地に足をつけると同時。ドスンと重々しく大地が揺れ動いた。
(10倍って事は、私の今の体重…500s近いって事?)
想像してゾッとする。
戦闘民族サイヤ人、彼等はこんな過酷な地に生を受け、それが当然の世界に生きて来たのだ。
(どうりでみんな化け物めいてる訳だわ。食事の量が半端じゃないのも頷けるわね。)
見知った顔が2つ。
その脳裏にとよぎって、ブルマは小さくため息を吐く。
先ほど居た場所から三歩歩った。
その足はもはやパンパンに筋肉が固くなり、持ち上げるのすら痛みを生じていた。
「あーっ!もう嫌っつ!!こんなんじゃ、いつまでたっても着かないわよっ!お腹も空いたしっ!喉も乾いたわっつ!誰でもいいから、私を王宮まで連れて行きなさいよっ!!」
周りに誰も居ないのを良いことに大声を張り上げる。
その大地の上にゴロンと仰向けになって寝転んだ。