現在
□漆黒の少年。
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(今は朝?夜?何にも見えないのね…。)
何層もの分厚い赤黒い雲は空を全て埋め尽くし、大地を闇に覆うべく怪しく蠢いている。
「…ベジータ。」
暗黒の世界にたった1人。
体にのし掛かる重さも加わり、心細さは頂点に達していた。
と瞬間。
ブルマの目に何かが飛び込んで来た。
最初は、ただの小さな黒い塊。
それは暗黒の空を切り裂く様に、ブルマに向かって来た。
「ベジータ!?」
それが確かに人影であると認識する。
空を切り裂き飛行する人影。
助けに来てくれたのだと、両手を広げたブルマは宙を見上げて満面に微笑んだ。
…が。
「!!!!ドシュッッツツ!!!!」
「きゃあっつ!!」
その人影は有り得ない速度にて、ブルマの頭上ギリギリに飛び抜けていった。
周りの空気すらも巻き沿いに、その速度から生み出された摩擦でブルマの体は軽々と吹っ飛ばされる。
「きゃあああっつ!!」
地面にと叩きつけられる。
この重力下で、それは死を意味していた。
固く眼を瞑る。
瞬間。ブルマの体は温かな温もりにと包まれた。
逞しくも無骨な腕がブルマの腰と足とにまわされる。
そのままブルマの足は、大地の上にと立たされた。
「はぁー。もう、ビックリしたわよ。でも来てくれて助かったわ。ベジー…。」
その首にしっかと捕まり、眼を瞑ったままだったブルマは、ふと違和感を感じた。
それは、匂い。
瞬間、眼をあけたブルマにと映り込んだ顔。