現在

□限界。
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簡素なる男の部屋。


意外にもすんなりとベジータの姿は見つける事が出来た。


皺一つないシングルベッドと、必要最低限の家具。


部屋の奥、広めの窓から続く半円形のテラス。


それに両手を掛けて、宙を見据えている。


夜の闇は、あれ程男の存在を強く誇張させると言うのに…。


柔らかな光に包まれたその背中は、今にも消えてしまいそうな儚さを宿していた。


「ベジー…。」


また目の前から飛び去ってしまうのか…。
そんな彼を咎めるべく掛けた声は、唐突に遮られた。


「限界だ。」


低く呻く様な声。


一瞬にブルマの目前に距離を詰め、腕を強く掴んで来た男によって…。


「ベジータ。あんた、その格好…。」


“気”を感知する事が出来ないブルマですら理解出来たベジータの異変。

戦慄く唇と、限界と言うまで開かれた双眼が見据える先。


その輝かしくも禍々しい光を放つプラチナの髪と、翡翠の様な美しさを宿した碧瞳がブルマの眼前で揺れ動いた。


「スパーク…起こしてるじゃないの。速く治療しなきゃ…。」


この彼の姿は、過去2回程見た事があった…。


一度は、雨の中無茶なトレーニングをした時。
2度目は、自身がパーティーに出掛けた時に…。

どちらにしても、急激に上げた“気”を体がコントロール出来ず、超化したままに暴挙を働き。


はたまた気絶したまま、それでも超化が解けず何日も寝込んだ時があった。


ともあれ、隅々まで鍛え抜かれた器すら超えた大いなる力が作用しての事。


このままにして置けば、いずれは肉体に支障が出る。


コントロールをして超化するのとはワケが違う。体の内側から溢れ出した“気”が彼の意志には反してこの姿を生じているのだ。


さぁ早く。と掴まれた腕と反対の手でブルマはベジータを急かす。


が、その体はビクとも動かない。


「治療だと?それが必要か?」
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