小説

□逃げられない。(7p)
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ユーゼフ様は優雅に腰掛けながらこちらを振り向いた。
「やあ、美味しそうだね。僕も君が煎れたコーヒーが飲みたいなぁ」

…そんな他愛の無いことを人懐っこい笑顔で言われても、こっちはテンパるだけだっつーの!!

コーヒーを持ったまま震えて突っ立っている俺を見て、彼は楽しそうに近づいて来る。

「ヒッ…や…!」
にげろ、と頭の中でしきりに声がする。
が、彼の表情がそれを出来なくさせる。…一瞬。たった一瞬だけあの夢と同じ顔をした…?
混乱する俺を差し置いて、いつもの顔で彼は言う。

「今日は逃げずにいてくれるのかい?」


…気のせい?いや…、やっぱり何処と無く辛いオーラが出ている感じがする。


「…っ、貴方が…」
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