曖昧な僕ら。


□仮称千隼自称C
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天使の背中にリアルに羽が見える。
天使も速いけど強盗も早い。
勿論俺も速いけどスタートの時間差でまだ追い付かれへん。
夜行性のくせにそれ以外は健康で健全な俺の天使は見た目に反してスタミナもあるみたいで、強盗は次第にバテて失速、逃げるのを諦めて倒れ込んだ。
直ぐに追い付いた天使は強盗の手から抜け落ちた財布を拾い、安堵の溜め息を吐いた。

「お財布取り返せて良かったあ。」

「ようあらへん。」

「…え?」

ようやっと追い付いて天使の柔らかいほっぺを両手で左右に引っ張る。
お仕置きや。

「うぃ〜〜〜ッ!?」

「素人さんが危ないやん。強盗追い出す所まではまだええとして、深追いしたらあかんやろ。聞いとる?」

「ひゃい〜〜〜ッ!!」

「ほんまにもー。悪を許せんのは立派やけど自分の身ィも大事にせんと。」

内緒にしといたるつもりやったけど、今後の為にも深追いした事は玲に叱ってもらわなあかへんな。
つねって赤なったほっぺたを撫でてあげてたら天使が瓶底眼鏡の隙間から上目で見上げて来た。
あかん、これは破壊力抜群や。
天使は実は心臓破壊兵器か何かか。
てか天使、目え悪いからレンズ通さんと俺の顔見えへんやろ。

「もしかして、あなたは、僕を心配して追いかけて来てくれたんですか?」

「当たり前田のクラ○カーや。」

「…ごめんなさい。」

天使がしょんぼり俯いてしまった。
ああ、なんて可愛い生き物なんや。
なんで先に俺が拾わへんだんやろ。
なんであの阿呆に拾わせたんやろ。
いや、この天使があの野生動物を放っておけへんだっていうのが正解か。
俺はあそこまで阿呆やない。

「くっそおお!!」

天使の後ろ、俺の心の声を代弁した強盗未遂が立ち上がり天使目がけてナイフを振り下ろす。
おったまげて動けへん天使を抱き寄せナイフをかわし、強盗未遂の鳩尾に長い脚をブチ込む。
吹っ飛んだ強盗未遂は嗚咽と涎、直に悪態も吐き散らかしながら地面をのた打ち回った。

 

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