Milky load.

□U reunion
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息をする間も無い。
したとしても足りない。
酸素が脳に行く前に消費される。
そこかしこに出来た傷の痛みだけが、意識を保たせる。
足は反抗期を迎え、両手もそろそろ家出をしそうな程酷使した。
リーダーは泣きそうになるのを歯を食い縛って堪えた。
いつもは聞こえると腹立たしいのに、今はその落ち着いた声が恋しい。
誰よりもその人物に弱さを見せるのが嫌で、自分から連絡を入れた事は今の今まで一度も無いが、今回ばかりはそうも言っていられない。
今、自分が倒れれば後ろの二人も道連れになる。
無線越しに本部に吠える。

「補充はまだか!」

「も…すぐ着き…す。」

電波障害でもされているのかそれとも壊れかけているのか、雑音に混じって腹の立つ声が聞こえた。
やっと聞こえたそれに安心する自分にも腹が立つ。
壊れた窓から転がり込む様に建物の中に入り、起き上がりながら中の死体が持っていた小銃を確かめる。
詰まってはいないが弾が少ない。
舌打ちをして全弾通りの反対に撃ち込み、投げ捨てた。

―カンッ

小銃が床を跳ねる音に混じった軽い音に振り返り、投げ入れられた球体が何か脳が理解する前に今度は扉を使って外に出た。
数発被弾するも自分にとっては致命傷では無い。
直後手榴弾が爆発し、締めた扉越しにその余波で地面に身体が叩き付けられた。
溺れる者は藁を掴み、転がるリーダーは粉塵の中また短機関銃を拾った。
転がった先は敵の築いたバリケードの真正面。
頭を低くして強引に体勢を整え、瓦礫の隙間に目を凝らして引き金を引くが銃は一鳴きもしなかった。

「ジャム、」

粉塵が晴れ始め、瓦礫から覗く人影と目が合い、両腕を交差して目の前に翳した。
自分のものではない銃声が響く。

「?」

しかし、何時まで経っても死ぬ気配が無い。
恐る恐る目を開けると自分と同じ制服が目に入った。
ラビでもジーンでも無い。
自分と同じ金髪が、本当の兄弟みたいで嬉しかったのを思い出し、胸が痛んだ。
あの綺麗な丸い後頭部は間違いない。

「シメオン?」

呼べば、主に忠実な少年は直ぐに振り返った。
鉄板の付いたグローブを振って、血を落とし、マスクを引き下げた。

「お久し振りです、坊ちゃま。遅くなってすみませんでした。…はっ、くしゅん!」

「ちょっと道が込んでてさ。」

シメオンは直ぐにマスクを戻したが、目元だけでも充分微笑んでいるのがわかる。

「俺達が来ましたから、もう大丈夫ですよ。」

優しい茶色の瞳が懐郷に誘うが、その背後が凄惨過ぎて嫌でも目が覚める。
銃声の数だけ淡々と敵が死んで逝った。
狙撃手が誰かなんて無線越しに声を聞かなくても、目の前の少年がシメオンである事を理解した時既にリーダーにはわかっていた。

「シメオン!おまえは銀髪に援護して貰え!レオ!おまえは栗色頭を援護しろ!」

「「坊ちゃまは?」」

「俺は一人でも大丈夫だ!早くしろ!」

リーダーはシメオンからマガジンを受け取り、それをジャケットに仕舞い込んだ。

「それと俺はもう坊ちゃまじゃない。リーダーって呼べ。」

「「イエス・マイ・ロード。」」

「早速違う。」

とりあえずニヤけているだろう本部の馬鹿野郎に悪態を吐くのは心に留め、確実に好転する戦局を治める為にリーダーは駆け出した。

 

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