Milky load.

□Y dawn
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「まず、今回の任務十二日間で出撃者三十九名のうち死者は三十四名。補充は三回、計二十四名。その内生き残ったのはユージーン王子、シメオン、レオの三名です。初動者はいつもと同じ、俺とラビの二名です。」

「今回は多かったですね。」

「…次に。数回の戦闘で全滅を回避する為に後退する事はありましたが、衝突した敵はほぼ戦闘不能にしました。最終的に敵は頭数を半数に減らし、撤退しました。」

「割に合わないどころか大損害ですね。御苦労様です。」

「最後に。補給が遅いです。補充も遅いです。もう少しで全滅する所でした。上は社会不適合者を駆除する事が目的でしょうが、我々が死ぬと防衛ラインの後退を余儀なくされる事を改めて意識して頂きたい。」

「手配に問題はありませんので無駄だとは思いますが、一応上に掛け合ってあげましょう。」

「シメオンとレオに補給部隊が途中で全滅していたと報告を受けました。補充隊員も途中で戦闘不能になったとも。シメオンとレオは司令官の直々の部下ですので、そちらは既に報告を受けていると思います。」

「はい。」

「…貴方はシメオンとレオを入れた。」

「僕に人事権はありませんよ。例えあったとしても強い子を入れようとは思いません。」

リーダーの言いたい事が手に取るようにわかったラドクリフは先手を打った。
思った通り、リーダーの瞳が儚く揺れる。

「何故ですか?」

「何でも強い者を入れれば良いという訳ではありません。大事なのはバランスです。」

「ばらんす、ですか。」

「はい。」

リーダーにはそれが理解出来ず、考えては見るものの結局いつもわからずじまいだ。
俯く細い肩に圧し掛かる疲れは目に見えてわかる。
ラドクリフは伊達眼鏡を外して居住まいを崩し、空気を変えてあげた。

「お疲れでしょう。次の任務の話はもう少し大人達と悪巧みをしてから言葉を選んで明後日伝えます。」

「…悪巧みって、おまえ。」

「今日はゆっくり休みなさい。」

リーダーの目が座り、濃い青に変わる。
ぶ厚いレンズを取っ払ったラドクリフの瞳は左右色が違う。
焦げ茶の右目と、光の加減で真っ赤に見える紅茶色の瞳はいつも柔らかい。
それが自分だけに向けられるものだと、リーダーは知らない。

「失礼します。」

「ああ、そういえば。」

退室しようとするリーダーの背を、ラドクリフの声が追う。

「本部に居る間しかまともに食事を摂れないのですから、好き嫌いせずお世辞にも美味しく無くても食べて下さいね。」

「…。」

「背が伸びませんよ。」

リーダーは聞こえない振りをして乱暴に扉を閉めた。

 

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