Milky load.
□Y dawn
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渋々と、明らかに渋々と現れた第四部隊分隊長、通称リーダーの登場に、食堂は騒然とした。
じろり と睨まれた場所は一旦鎮まるが、それ以外を黙らせる事は出来ない。
リーダーは、うっかり飛び出してしまわない様にいつも両手はポケットに入れたままだが、足はしまい様が無い。
その辺の机を蹴り上げたい衝動に駆られた時、好意的に自分を呼ぶ声が聞こえた。
「遅いじゃないですか。もう食べちゃいましたよ?」
「レオ。」
返却口へと向かっていたレオは盆を頭上に上げ、腹でリーダーを受け止めた。
「美味しかった?」
「小さい頃の主食だった生ゴミより数百倍マシですよ。」
うるっ。
リーダーの目が潤み、レオが慌てる間もなくその後頭部にシメオンの張り手が飛んだ。
「お先です。」
「気にしないで。俺は食べないから先でも後でも無いよ。」
「ご一緒は出来ませんが、その分しっかりと見張っていますので、じゃがいも以外も良く噛んで良く食べて下さいね。…レオ。」
「合点承知。」
シメオンはレオから盆を受け取り、レオはリーダーを捕獲した。
嫌がるリーダーをレオは軽々席に運ぶ。
その横をラビが通り過ぎた。
「あれ?ジーンは?」
「まだ寝てる。」
「起こしてあげなよ。食べ損ねちゃうだろ。」
「王子様は最上級の生ゴミなんて要らねえと思うけど。」
「それでも食べないと身体に悪いだろ。」
「おまえが言うな」と三人の目が口程に物を言うが、リーダーには伝わらなかった。
「レオ、離して。ジーン起こして来る。」
「逃げないって約束しますか?」
「ジーンが要らないって言ったら便乗する。」
「それ、逃げるの確定じゃないですか。兄貴。」
「わかってる。」
リーダーの右手をシメオンが、左手をレオが持つ。
捕獲された宇宙人の様な姿に、ラビも吹き出す。
リーダーは今直ぐこの屈辱的な状況を何とかしたいが、二人が盆を持っている所為で食堂を出るまで暴れる事は出来なかった。
「ちょっとは加減して下さいよー。」
ぼやくレオの隣、シメオンの顎も少し赤い。
ラビは、二人に頭突きをお見舞いした低い位置にあるリーダーの後頭部に目を凝らしていた。
「朝早くから何処行ってたんだ?」
「昨日司令官に報告してなかったから。」
「じゃあ昨日遅く帰って来たのは、何処に行ってたからだ?」
シメオンとレオの目もリーダーに向けられる。
リーダーは相変わらず飄々と聞き流した。
ラビの米神に青筋が浮かぶ。
「テメエ、指定範囲外の時間外無断外出は規則違反だぞ。」
「不良少年だもん。」
「だったら俺も連れて行け。」
「ついて来れるならどうぞご自由に。」
リーダーは短い舌を出してラビを振り返り、間髪入れずに迫った居合いを屈んで避けた。
勿論大事な元主への暴挙を、シメオンとレオが許す筈が無い。
兄弟がラビの両側から掴み掛かるのをこれ幸いと、リーダーは三人を置いてスキップの様な軽い足取りで宿舎へと向かう。
三人は一瞬顔を見合わせ、一時休戦とリーダーの後を追った。
「ちっ。」
聞こえて来た舌打ちに、ラビだけは鼻で笑って返した。