Milky load.

□Y dawn
5ページ/5ページ



「ジーン!起きてー?朝だよー!」

当然、ジーンの部屋の扉を叩くリーダーの後ろで、ラビは腹を抱えて笑い、シメオンとレオは元主の愛らしさにときめき、痛くすらある胸を押さえて見守った。
一人、事情のわからないリーダーはシメオンを振り返り首を傾げる。

「体調不良とかじゃないよね?」

「いえ、悪そうでした。」

「何で放っておくの!?」

応答の無いままリーダーは扉を開け、大きなベッドの天蓋を捲って、また首を傾げた。

「あれ?いない。」

ラビの笑いが大きくなる。
リーダーが行き違いになったと思っているのがわかったシメオンは、流石にこれ以上は可哀想だと右手を上げた。

「ユージーン王子はリーダーの部屋で寝ています。」

「ふうん?やっぱりくまさんが恋しかったのかな。」

ラビの笑いが更に大きくなる。
リーダーは通り過ぎ様ラビに軽い蹴りを一撃お見舞いし、自分の部屋の扉を開いた。

「ジーン、大丈夫?気持ち悪い?」

リーダーはジーンの隣に寝そべり、顔がありそうな場所に話しかけた。
シメオンとレオは元主の相変わらずの愛らしさに感極まっている。
その隣でラビは真顔に戻って、様子を窺っていた。

「ご飯、食べられそう?」

リーダーがジーンの辺りの布団を捲った時だった。
布団から手が伸び、驚くリーダーの腕を掴んで布団に引き込んだ。
予想外の事態にシメオンとレオが慌てて布団を剥ぐのと、ラビが上に覆い被さる方の首に剣を突き付けるのは同時だった。

「「坊ちゃま!」」

「大丈夫。どっちも大体寸止め。」

まだよく事態を把握出来てはいないが、そう答えたリーダーは、自分の首筋に噛み付くジーンに目を向ける。
後ろ頭が見えるだけで、顔までは見えない。

「痛くないけど、くすぐったい。…ジーン?」

「ご、めん。」

ジーンの謝罪に皆が安堵したのも束の間、ジーンはゆっくりと顔を上げ、ジーンの首を飛ばそうとしたラビの剣を間一髪腕で防いだリーダーの、薄ら血が噴き出る手の甲を飢えた獣の様に物欲しそうに見た。

「それ、欲しい。くれ。」

シメオンとレオがジーンをリーダーから引き剥がそうと頷き合った時、それはリーダー本人に見もせずに手を立てられ止められた。
リーダーは目の前のジーンから一瞬も目を離さない。
怖くない筈が無い。
仲良くなって安心しきっていたのに、この状況だ。
いつ気が変わって殺されてもおかしくは無いという、今まで意識しなかった可能性がリーダーの中で大きくならない訳が無い。

「(それでもこれは“あの”ジーンだ。)」

リーダーはいつの間にか溜まってしまった唾を飲み込み、恐る恐るジーンに頷いて見せた。
ジーンは両手で掴み貪る様にリーダーの手を舐め、見る見る内に生気を取り戻したが、顔色は悪いままだ。
一見捕食の様な舐め方から、動物が傷を労わる様な舐め方に変わる。
ジーンは目を閉じ、直ぐに傷が塞がっていたリーダーの手の甲に口付けた。
暫くして意を決して口を開こうとするのを、止めたのはリーダーだ。

「良いよ。王族は簡単に謝れないんだろ?」

ぽす。
リーダーの胸にジーンの顔が落ちる。
リーダーは両手でジーンの頭を抱き締めて頬擦りした。

「少しは元気になった?」

ジーンに胸で懐く様に頷かれて、くすぐったくてリーダーは声だけで小さく笑った。

「なんか大っきい猫みたいだ。」

 

前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ